第2話 二人の来客(重要なのは片方のみ)



午後



「………………」



なんなんだよこの永遠の沈黙は……、喋ったりしたら死刑にでもなんのかな?やるべき仕事があるわけでもないので、この沈黙は余計に堪える。

いや!ダメだこのままじゃ!現状がダメだと思うなら自分で変えなくちゃいけないだろ、漢カワサキ!


「あのー……」


「ん?どうかしたかい?」


「……え、えーと、何かやる仕事とかありますか?」


江守さんは笑って答えてくれた。


「ないよ(ニッコリ)」


「そ、そうですか………………」 


「…………」


「…………」


「…………」


じゃなくて!バカか!仕事がないのは分かりきってんだろ!今日まで何もしないで3日間だぞ。なにかもっとキャッチーな話題がいいかな……


「江守さんって何か趣味とかあるんですか?」


おーやるじゃないか自分、この質問まぁまぁいんじゃないか?


「うーん………………」


江守さんは考える、考える、考える、考えて考えて考える

出す答えは一体!?


「数独」


「…………そうなんですねー(精一杯の笑顔)」


そうだよね、いっつもやってるもんね……いっつも


「………………」


あ、ヤバいまた沈黙が、、、


「ヤマザキ君は何か趣味あるの?」


ナイス!江守!さすがは室長!うまいぜその切り返しは!


「そうですねぇ…………」


このチャンスを無駄にしちゃなんねぇな!

俺の趣味、えーとなんだろう、えーと……えー



うん、ない



未だにコロコロコミックのギャグ漫画買ってる…………これどうかな?趣味かな?いや、違うだろバカかよ、ヤバい時間が経ってゆく、何か、何か答えないとー!!



「数独です(キリッ)」



やっちまったーー…………_| ̄|○

やめてください江守さん、目を輝かせないで……、私はあなたの数独仲間にはなれません。

まずいな、流れ変えないと、ルリに振って、この数独仲間一直線の流れを断ち切ろう


「ルリは何か趣味あるの?」


ルリは、話振られて嫌そうな顔してる


「アタシ?…………」


なんだろ、まぁ大体わかるような気もするけど、どうせブログかファッション系だろ


「盆栽」


はぁ?嘘つけや、コイツ…こっち見て笑ってやがる、意図に気づかれてたか!当然俺は盆栽という答えに何も返せない、江守は迫る!


ピンチだ………………!と、ここで!



「こんにちはー」


おお!タイミングよく、ここで1人目の来客があった、だけど一体誰だ?こんな所に用事があるって一体…………


「こんにちはー、ド○ノピザです」


「!?」


勤務時間中に、警察に、ピザ?笑っちゃうぜ!

It is a nice joke!(アメリカ風)

うん……ジョークじゃないみたい、笑えねー、

ルリは慣れた手つきで会計を済ませている。


「あ、領収書ちょうだい、経費で落とすから」


いや、経費で落ちるわけねーだろが


「あ、了解です」


配達員も了解すんな


「……ルリさん、おいしそうですね」


江守さん!ピザに引かれないで!ソレ食べたら一線越えちゃうよ!

だが、世の中は悲しいかな、ルリは江守さんに微笑みながらも無情な答えを提示した。


「ダメです、自分で頼んでください、」


冷てー、江守さん、しょんぼりしてる……

部屋の中にチーズの香りが充満してる、ああ腹減ってきた…………




………………………………………………………




夕日が沈みかけている。

仕事がなく暇な第三課の連中は定時退社する。つまりこれくらいの時間にはとなりの部屋から人がいなくなるのだ、これが結構怖かった、3人でくらい部屋の中、それに加えてこの部屋の周りの人の気配が完全に消えてしまうのである。

だからこそこの音にビックリした



「トントン」



ドアを叩く音がした

誰だろうか、ピザ配達員か?おつりの計算間違ってたのかな?

扉がゆっくりと開く


「!」


そこには、ド〇ノピザに続く2人目の来客、スラっとした体型、ワックスで固めた髪、整った顔を持った完璧超人がいた。

『茂山』この男の名前だ。ちなみに俺よりも7~9歳ほど年上、捜査一課に配属されている刑事で一課の中でもエース中のエースと呼ばれている。弱冠30代で警部となり、現在は警視の階級と捜査1課長の座を狙う野心家でもある。なんでそんな人がここに?


「江守、アレはできたか?」


茂山は江守さんに向けて話している。本当に江口さんだけに用事があるようで、ルリと俺の存在は無視しているみたいだ


「できましたよ」


江守さんが笑顔で答える、


「そうか、じゃあこれ次のな」


茂山は江守さんからファイルを受け取ると、また別のファイルを江口さんに手渡した。



バタン



茂山は江守さんに挨拶もせずに出て行った。

日はもう完全に暮れていた。



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~千光年~ 島根県警、窓際事件録 西崎 碧 @nishizaki

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