第1話 自称エリート、県警のゴミ箱へ配属される。

…………………………………………………



謹慎開け、気分は最悪だ



「えー、こちらがですね新しくこの生活安全課に配属されることになった川崎正一刑事です。」

川崎正一は俺の名前である。人の良さそうな課長が俺のことを紹介した、本当に人が良さそうだ、だがこの生活安全課に入ると言う事は本当に人がいい『だけ』なんだろう。


生活安全課は県警屈指の窓際部署として有名である。別名県警のゴミ箱。ここに来るのは3つの人種に限られている。

1、上層部からゴリゴリに嫌われた人

2、仕事がすごくできない人

3、俺みたいなやつ、つまりやらかしたやつ

…おそらくこの課長は仕事がすごくできない人、これだろうな。まあなんにしても、見かけがいいだけでろくな人物ではないはずだ。


「パチパチ…パチパチ」

まばらな拍手が俺を出迎えてくれた。

「えーと川崎くん、キミの事なんだけど実はね、上層部から直々に処遇についてどうするか連絡が来ていてね、」

「はあ、そうなんですか、」

一体何だと言うのだろう、やっぱり懲戒免職か? 課長が続ける。

「少し案内したいから、私についてきなさい」

課長は俺はどこに案内するつもりだろう?

俺は課長の後を追った。

「あれ、生活安全課の部屋を出ちゃうんですか?いったいどこに向かうつもりで?」

「実はねえ、キミが配属されたのは、あの部屋ではないんだよ、キミが配属されたのは、なんというかその…生活安全課の支部みたいなところだ。」

「はあ、支部ですか…」

県警のゴミ箱のさらに支部?ますます俺の未来は絶望的だ。

「まあ、ついてきたまえ。支部とは言っても同じ階にあって同じ廊下でつながっている部屋にある所だから会おうと思ったらすぐに会えるさ」

課長が謎のフォローを入れてくれる。いや別にあんたに会えないのが残念なわけじゃないよ…


「ここだよ、君の新しい職場だ」

「?」

案内された部屋の入り口は生活安全課がある廊下の突き当りにあった。さび付いた鉄の扉である。こんな部屋があったのか…何年もこの建物に勤めながら、私はこの部屋の存在を知らなかった。

課長は話続ける。

「上層部がね君を生活安全課の中でもここの部屋に配属しろと言ってきたんだよ」

「ここにですか、」

俺はその扉の上の古ぼけた標識を見上げる。

「まぁ、あんまり気を落とさないでくれ、今回は不運だったね」

最後になぜか気持ちの良い笑顔を残して課長は去っていった


【生活安全課資料保存室】これが俺の新しい職場だ。



…………………………………………………





ドアを開くと見知らぬ2人の姿が現れた、男女である。


…おい、ちょっと待て、ここはほんとに警察かよ…


片方の男は勤務時間中なのにも関わらず数独をしていた、もう一方の女と言うとファッション雑誌を読んでいる。世紀末だよコレ…


一人目は、数独をしていた男、背が高い180センチを軽く超えているだろう。俺よりも年上だ。ここは葬式会場かと疑う位の真っ黒のスーツを着ている。眼鏡はかけていない、全体に温和な印象を受ける。温和?そう表現するにはどこか違和感があるかもしれないかった、理由はなぜだかわからないのだが…


ふたりめは雑誌を読んでいた女、背は俺より低い、おそらく、いや確実に年下。平均的な女性の身長である。スーツはグレー、茶髪のショートボブ。

『いまどきの女の子』といった雰囲気である。そして何より、いじわるそうな目つきをしている。


なんにしても俺はここでまたやり直さなければならない。

「今日からここで働くことになりました川崎正一と申します。どうかよろしくお願いします」

そう自己紹介をすると、背の高い男の方が反応をしてくれた。

「こちらこそよろしく、僕の名前は江守、よく来てくれたね」

江守さんはわざわざ俺も元までやってきて握手をして迎えてくれた。随分と紳士的なんだな、歳下の俺に対しても丁寧な物言いだ。

俺の事をこき使った挙句捨てたあのクソハゲとは正反対だ。やっぱり上司はハゲてたらいかんね。

江守さんからあふれ出る人の良さの少し感動…


そんな感動のひとときをは生意気な声によって切り裂かれた。 

「よろしく、樋口るり、呼び名はルリで」

なんだこいつは、江守さんの丁寧な対応の後だと余計ショックが大きい、お前年下だろうが!敬語使えや!敬語をよー!

むかつくが、それでもこれから一緒に働いていく仲間なので、しょうがなく挨拶はしておこう。

「川崎と言います、これからよろしくお願いしますね(ニコッ)」

「・・・」

あ?コイツ俺の‘‘敬語の挨拶‘‘をシカトしやがったのか?なめてんな。


江守さんが俺に質問をする。

「川崎君は前までどこの部署にいたの?」

「!」

お、きたかこの話が!フフフ、俺は勝ち誇った顔で言ってやった

「捜査一課です」

オラ!どうだ!俺は前まで県警のエース部署、捜査一課に所属していたんだぜ!

「おお!すごいねぇ」

ニコニコしながら江守さんは応えてくれた。いや~、僕優秀でゴメンなさいw

どうだルリ、これで俺が敬意を払うべき大先輩だと理解したかあ~?w

「は?自慢かよ、きしょっ」

おいなんだよこいつ、上下関係理解してんのか?俺を無視してルリは続ける

「江守さん、コイツきしょくないですか?」

おい!江守さんに同意を求めんなカス。あ~あ久しぶりにキレちまったよ(暗黒微笑)

「はあ?さっきから言わせておけばよお、お前何言ってんだ。江守さんがそんなこと思ってるはずがねえだろが、ねえ江守さん?この失礼なクソ野郎に何か言っやってくださいよ」

「いや、川崎君はきしょく悪いとは思うよ(苦笑)」

江守さん……




自己紹介が終わると当然のように会話はなくなった、この資料保管室と言うのは暗く狭い、10畳ほどの部屋に資料用の棚と机が1つ、窓は高い位置に1つしかなく蛍光灯は切れかけている。

「…………」

江守さんは相変わらず数独に勤しみ

「…………」

くそ女、ルリはファッション雑誌をペラペラめくる

そういえばだが、県警のゴミ箱から『脱出』できたと言うような話は聞いたことがない。


俺は定年までこの部屋に通いつめるのだろうか……























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