終章 廻生の相対者

X エピローグ




 【喪霜もしもモールB4F、NB根拠地】



 ドクタークライシスは命からがら、秘密基地の地下にある隠しエリアへと逃げおおせた。


「よもや……PDX、ゼロワン……。この私を、裏切るとは。黒宇頭くろうず亜郎つぐろうの研究室の人間だからと、特別扱いしたのが失敗したか――まさか自ら洗脳を解き、行動するとは……」


 しかし――喪霜大学を襲い、多くの学生を拉致した際――


(あの青年も、空須磨からすまルークと同じく『ベータリアン試料』をその身に宿した――捨てるには、惜しい素体だ。……くっくっく、ここは、さすがはマスター・クローズの弟だと、黒宇頭亜郎を褒めてやるべきか)


 コツ、コツ、と。


 奥の暗がりから、靴音が響く。


「見ていたよ、ドクター。散々だったね。未散みちるを失い、ゼロワンを失い――あの実験体を、本気にさせてしまった。どうしてくれるんだい、彼が今後、ヒーローの真似事でも始めたら」


「ジュニア――マスター・ジュニア……」


 現れたのは、陰を宿した青年だった。

 彼こそ、ネオ・ベータリアン総帥マスター・クローズの一人息子クローン――黒宇頭シンヤ。


「まあ、対抗勢力ヒーローがいることは、いいことだ。生物は競い合い、進化するもの――我々は備えなければならない。やがて人類の中から現れる――〝真ベータリアン〟の因子意志を継ぐ者たちに――これは、そのための戦いだ。社会に警鐘を鳴らし、戦う術を手に入れさせるための。――ドクター、これで終わりじゃないんだろう?」


「ええ――こちらにもまだ、『ベータリアン試料』はあります――」


 ドクターは、壁際に安置された培養カプセルに近づく。


 そこには『PDX02』――PDXナンバーのクローン体が眠っていた。



「覚醒するのだ、第二の前野まえの正嗣まさつぐ――ベータリアン因子を受け継ぐもの、我らネオ・ベータリアンの先兵として! さぁ、我々の戦いはこれからだ!」



 そして、青年は微睡みから浮上する――再び友と、相まみえるために――



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怪人X -Reincarnation- 人生 @hitoiki

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