君はいつでも空にいて
空白
君はいつでも空にいて
水色、青、白…。
慣れた手つきで絵の具をパレットの上に乗せる。そして、混ぜる。
混ぜることによって新たな色ができる。それをまた混ぜる。
そんな作業を納得のいくまで繰り返して、私の空の絵は作られている。
「まーた空の絵描いてんの。」
興味なさげに聞いてきたのは、私の男子友達の富多星那。興味がないなら見るなよって心の中で思う。
「来衣、そろそろ帰るぞ。それか置いていくぞ。」
「はいはい、帰れば。」
こんなことを言ったって、あいつは帰らない。虚言ばかりなのか、ツンデレなのか。
「お前、なんでそんなに空が好きなの。」
唐突にかけられた質問に、体が硬直する。
今思えば、何でだろう。色が好きだから。綺麗だから。いや、そんな理由なんかじゃない。深く考えることなく今まで過ごしてきたけど、何でだろう。
「空って、その日その日で違うんだよ。気持ちみたいに変わっていく。諸行無常なんだ。そういうのって面白くない?」
気付いたら、口が動いていた。いや、これこそが本心なのだろう。きっと。
「ふーん。俺、そのショギョウナントカってゆー言葉知らないわ。」
「…あっそ。」
学級でも不謹慎な態度は、私の前でも変わらない。コイツにだけはその言葉は似合わない。
「じゃあ、またな。」
「ん、また明日。」
星那に背を向けて歩き出す。肌寒い風が吹いて、秋の知らせが来たようだ。
「もう、秋か。」
そんな独り言は風に飛ばされ、ふと顔を上げると橙と赤が良い感じに混ざった茜色の空があった。
君はいつでも空にいて 空白 @kuuhaku-novel
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます