居場所があれば、人は変われる

 本作は京都の小さな女子寮を舞台に、自己肯定感を失った少女・美希が、仲間たちとの交流を通じて成長していく物語です。

 本作の最大のテーマは「支え合うことで、人は本当の自分を取り戻せる」に尽きると思います。主人公の美希は過去の経験から「自分には価値がない」と思い込んでいますが、自由奔放な炭川、冷静沈着な由梨、頼れる寮委員長の新市、そして真摯な武田との関わりを通じて、次第に変化していきます。

 「親が毒でも彼氏がクソでも仲間がいれば大丈夫!」このフレーズには、彼女の歩んできた道のりと、本作のメッセージが凝縮されています。どれほど家族に傷つけられ、恋愛に失望したとしても、自分を理解し、支えてくれる仲間がいれば、人は前を向くことができる──そんな希望に満ちた宣言です。

 この物語は、孤独を感じるすべての人への温かなエールでもあります。辛い過去を持つ人も、今まさに悩んでいる人も「自分には大切にしてくれる人がいる」と気づいたとき、世界は変わるかもしれません。読後、心がじんわりと温まる一冊です。