第4話 渋谷スクランブルバトル①
「あのさ」
「うん」
「あの子、結局どうするわけ?」
至ルとリセリアがお茶とどら焼きを手に取りながら目を向ける先には、今も一生懸命に働いているルウカの姿がある。わずか一週間ほどで、あっという間に『マッチ』の看板娘第二号の地位を確立したルウカのやる気っぷりは、相当なものである。
だが_____ヒーローとして活動することが相応の危険を孕むということを、至ルとリセリアはよく知っている。
「もしこのまま私たちと一緒にいたら……遅かれ早かれ、あの子は私たちの戦いに加わることになるよ」
「分かってる。巻き込むことだけは……絶対にしない」
至ルは頬の傷に触れながら、ルウカの笑顔を眺めていた。あの笑顔を曇らせることだけは、ヒーローとしてやってはいけない。
_____夕暮れの時間になり、『マッチ』にシャッターが降りる。これから店の片付けをした後、パトロールの時間となる。
だがその前に、リセリアのスマホが震えた。
「あ、リセリアちゃん、携帯鳴って_____」
ルウカはリセリアにスマホを渡そうとして……それを手に取るリセリアが、ゾッとせざるを得ないほどに真剣な雰囲気になったことに気づいた。
「リ……リセリアちゃん?」
「_____至ル」
「分かってる」
二人はヴィランと対峙した時よりも明らかに緊張感を孕んだ声と表情で、テキパキと出発の準備を済ませていく。呆気に取られていたが、ルウカも準備をしなければ。
「_____待って。ルウカは来ないで」
「え……?なんで_____」
リセリアがそれに応えるより早く、テレビが答えを教えてくれた。
『速報です。ただ今渋谷スクランブル交差点付近にて、複数のヴィランによる暴動が発生しております。ヴィランは非常に凶暴です。付近にいる方はただちに避難を、そしてヴィランには絶対に近づかないでください。繰り返します_____』
映し出されたのは、高層ビルが立ち並ぶ渋谷の街。連日連夜無数の人が行き交う交差点が_____明らかに人外のものとしか思えない怪物によって、破壊し尽くされていた。そして、そんな破壊をもたらすヴィランが、複数現れている。
「……
ヴィランとは、様々な現象が折り重なった原因でごく稀に現れる存在であり、例え世界有数の人口を誇る東京であっても、そう滅多に現れるものではない。
そんな珍しい存在が、複数人一箇所に集まる。それがどれだけ異常なことであるかは、ファイアマンオタクを続けているルウカはよく知っている。
そして、現場に赴いてヴィランと戦う至ルとリセリアは、さらにその先のことも知っている。
「いいかい、ルウカ。例え何があっても……絶対についてくるんじゃないよ。ついて来たら、『マッチ』はクビだ。いいね?」
リセリアがドスを効かせた脅しでルウカをその場に留めるが、ルウカとしてはもちろん逆らう気などない。理由は、ドスを効かせていなくとも……リセリアが放つ殺気に近い威圧感が、怖かったためだ。
ルウカを『マッチ』に残したまま、至ルとリセリアは車を猛スピードで走らせて行ってしまった。
本当ならばリセリアが用意した賄い料理をいただいてから帰るのだが、こうなっては賄いは期待できない。『マッチ』にいてもやることがないため、このまま帰ろうと思った。
「……あ」
ルウカは_____自分の帰り道が、渋谷駅を通ることを思い出した。
__________
至ルとリセリアを乗せた車は高速道路の上を途轍もない勢いで通り過ぎていく。交通ルール違反を何度かして他のドライバーを困らせてしまったが、事情があるためいちいち気をつけている暇はない。
「高速を降りるタイミングで出る。逃げ遅れたやつがいたら_____」
「分かってる。気をつけてね」
至ルは仮面をマスクを被り、高速道路の出口に差し掛かったタイミングで車を飛び出した。周囲に人目がないことを確認した後、炎を使った飛翔によって勢いよく渋谷の中心地へと向かう。
そこでは現在、主に三人のヴィランが暴れていた。
一人は、熊のような体の首元に人の顔が浮かんだ変形型のヴィラン。恐らくは熊の着ぐるみとの合一化によってヴィランと化したのだと思われた。
もう一人は、全身をサボテンのような棘に覆われた、怪人型と呼ばれるヴィラン。怪人型とは人体に異常が発生することで生まれるため、このヴィランの棘も人体の一部ということになる。
最後の一人は、全身を黒いヘドロのような物質で塗り固めたヴィランだった。もはや人の原型を残しておらず、ヘドロが人の形を模していると言った方が正しい。こちらは異形型と呼ばれる、自然界などから発生する特殊な物質と人間が混じることで発生するヴィランだ。
三人は近くで破壊活動を続けているが、互いに干渉し合うことなく活動している。そこから分かるのは……彼らが、組織だったヴィランだということ。本能のままに暴れ回るヴィランは、同時発生した場合互いを攻撃することもある。
それをしないということは、本能のままに暴れることよりも優先するものがあるということに他ならない。
その目的とは、すなわち_____
「よぉ。俺が目当てなんだろ?」
空から光と共に現れたファイアマンは、スクランブル交差点の最も目立つ場所_____大きなスクリーンの置かれた建物の屋上から、三人のヴィランを見下ろした。
三人の顔に、歓喜が宿る。
「……ゲハッ、ゲハハハハハハハハハハ!まさか本当に来てくれるなんてな!待ってたぜぇ、ファイアマン!」
熊の着ぐるみを着たヴィランは抜け駆けし、ビルのガラス張りを叩き割りながらビルの屋上へと勢いよく這い上ってきた。巨大な体を軽々と持ち上げるところといい、かなり高い身体能力を誇っていると思われた。
ファイアマンは下からの突進をヒラリと躱し、巨大な図体から繰り出される獣の引っ掻き技をいなし続けた。手先は完全に本物の熊のそれとなっているが、爪だけが特別に鋭くなっているところを見るに、そのヴィランの凶暴性が着ぐるみに影響を与えていることが察せられた。
「オラオラオラ、逃げてんじゃねぇよ。ファイアマンなら、正々堂々とかかってこいよ」
「……街中で暴れて俺を誘き出したのは、正々堂々なのか」
ファイアマンは、マスクの奥で眉間に皺を寄せる。
ヴィランが破壊を振り撒くことは、致し方のないことだと割り切っている。そうでもしなければならない事情があるヴィランもいるからこそ、ヴィランの退治は単なる『正義vs悪』でないことを肝に銘じているのだ。だからこそ、例え相手がヴィランであったとしても、その価値観を否定しないよう、心掛けてきた。
だが_____一つだけ例外がある。
「あぁ?」
「俺はな、ただ暴れたいだけのヴィランには少しだけ優しくしてやるって決めてるんだ。何もかもぶっ壊したいって気持ちは、分からなくもないからな」
ファイアマンは、全身を迸る炎を体外に放出した。その輝きは、ヴィランたちが破壊したことによって振り撒かれた、破壊の痕跡としての炎とは随分と違う。
目を背けるほどに眩い、太陽のような炎である。
「だが_____俺を引き出すために、意図的にたくさんの人に迷惑をかけるってんなら話は別だ。そんなのはただの暴れん坊じゃねぇ。正真正銘のヴィランだ」
「ははっ、だったらどうするんっでんだ?」
続きを言おうとしたヴィランの顔に、ファイアマンの膝が叩きつけられる。筋肉が肥大化したヴィランや、猫の着ぐるみと一体化したヴィランと戦った時には行わなかった、積極的な攻撃行為。
ファイアマンが、その牙を剥いた。
「_____こうする。俺は、仏様みたいに優しくないからな。ムカつくお前らのことは、助けてやらん」
至って平均的な体つきから放たれた蹴りが、二倍以上の背丈を弾き飛ばす。眼に見えない速度での膝蹴りは、常人が当たれば骨が折れるだけでは済まない。
だが、蹴りを受けたのは、常人をやめたヴィラン。
「ハハッ、ハハハハハハ!いいねぇ、そうこなくっちゃな!」
熊の着ぐるみに紛れた男の顔には、滲んだ血の跡が残るのみ。その体は、ヴィラン化に伴い、頑丈になっていた。
「『アンベアー』、それが熊の着ぐるみと俺を合わせた、俺たちの名前だ!」
ファイアマンとヴィランの、本格的な激突が始まる。
__________
戦端を開いたヴィラン、アンベアーの鉤爪が屋上を縦横無尽に抉り砕き、足場が下へと落下していく。浮遊能力があるファイアマンとしては、足場の崩壊は逆にありがたい。
「テメェ、降りてきやがれ!」
炎による遠距離攻撃手段もあるが、それでは必要以上に建物を破壊してしまう恐れがある。そこまでしなくても、距離を取ればアンベアーは攻撃手段を失い、その内力尽きてくれる可能性もある。
だが_____他のヴィランも同じとは言えない。アンベアーに気を取られている内に、下から無数の棘が射出された。
「_____っ⁉︎」
「ふふふ、棘は射出できる上、空中で操れるのですよ」
ギリギリで回避することができた棘の群れは、まるで追尾ミサイルのように空中で向きを変え、ファイアマン目掛けて再び放たれた。避けてもずっと追尾を続けてくるため、炎で焼き尽くすことで棘を破壊する。
だが、棘は何度も生え揃い、再び放たれる。細い棘ではあるが、それでもコンクリートの壁を貫通するだけの威力を持っている。
「私の名は『ソーム』。どうぞお見知り置きを、ファイアマン」
(距離を取っても埒が開かねぇか。なら_____近づく!)
足から炎を噴出し、音をも置き去りにする急激な接近。棘の追尾では間に合わない。拳をソームの
反応していなければ、ファイアマンは今頃全身を串刺しにされていたところだろう。とんでもないカウンター技を持っていた。
「うひひ、私は別に遠距離専門じゃないですよぉ?」
「ちっ……」
距離を取っても距離を詰めても変わらない棘の脅威。ソームに対する攻略を考えあぐねていたところに_____
「_____ヘドロブラスト」
背後に迫っていたヘドロのヴィランが放った、圧縮させたヘドロの射出攻撃。砲弾のような威力が直撃し、ファイアマンは陥没した道路の地下へと叩き落とされた。
「ドロロロ、俺とも遊んでぐれよぉぉぉ」
「……『ヘイドロ』、横槍はやめてもらってもいいですか?不愉快です」
ソームはヘイドロと呼ばれたヘドロのヴィランを睨みつけるが、ヘイドロは人間の原型を留めていない顔でニタリと笑う。
「ドロロ、俺たち、別に仲間じゃないもんね。邪魔するなら、お前も殺すよ?」
「ちっ、面倒な……」
能力の相性からして、ソームではヘイドロに勝てない。そのため、争いになれば勝ち目がない。
「ゲハハッ、仲良くしようぜ!別によ、一緒に戦う必要なんてないだろ?誰が一番先にファイアマンと倒せるか、競争だ。妨害、邪魔、なんでもアリでな!」
ビルから降りてきたアンベアーは、ソームとヘイドロがどうするかなど気にしない。暴力衝動を抱えているヴィランにとっては、何も気にせず暴れる方が、力を発揮できるのだ。
「うん、俺、それがいい!」
「やれやれ……私の邪魔だけはしないでくださいね」
「やだね!俺がファイアマンを倒す!」
ファイアマンが地下から飛び出し、真っ先に距離を詰めてきたアンベアーとぶつかる。力づくの突進を行うアンベアーに対し、ファイアマンは炎の噴射による突進で対抗する。衝突の衝撃によって地面が割れ巨大な図体と炎の体が押し合う。
そこに、ソームの棘が空中から降り注がれる。横に跳んで躱すが、すかさずハイドロによるヘドロの射出攻撃、が銃の連射のように叩き込まれていく。高速移動による回避、そして遮蔽物を利用した移動によってなんとか命中を防いでいるが、徐々にソームとハイドロはファイアマンの動きに慣れてくるだろう。
ファイアマンは状況を冷静に分析し、三人の各個撃破を狙っていた。それと同時に、この三人に
(パワーが同じくらいの近距離型が一人と、殺傷能力の高い遠距離型が二人か。統率がなくても、各々の得意を生かして無自覚に連携してやがる。この三人を組ませたブレーンがいるな。倒すとしたら……棘野郎かヘドロのどちらかか)
アンベアーは、他の二人の戦い方を観察しながら、自分がファイアマンを倒すための画策を始める。
(ファイアマンのパワーは俺と互角!おまけに炎もあるときたら、殴り合いで真正面から勝つには工夫が必要だな。殴り合っているところを俺ごと攻撃されたらたまったもんじゃねぇし……理想的なのは、ファイアマンが二人のどちらかを倒して疲弊した隙に叩くことだな。遠距離型のお前らとしても、俺を倒されるのは嫌がるはずだし、そうなると……)
ソームは、自分とハイドロがファイアマンに狙われる可能性を既に考え、対策を考えている。
(ファイアマンにとっての最善手は各個撃破。ならば、確実に遠距離型の私かハイドロを殺りにくるはず。最善手はハイドロをファイアマンに撃破してもらい、その後にアンベアーとファイアマンがぶつかった隙を二人まとめて串刺しにすることだな)
そしてハイドロは己の闘争本能のままに、考えを巡らす三人を無視し、単独でファイアマンに飛び掛かっていった。
「俺はぁぁぁぁ、汚いの、好きぃぃぃぃっ!」
全身からヘドロを噴出しながら、その体が徐々に人の形を取っていく。
(おいおい、マジか)
(あのヘドロ野郎……!)
(形態変化……⁉︎近距離戦にも対応できるのか?)
三人の必至の思考を嘲笑うかのごとく、その体は能力されたヘドロによって形成され_____その腕から放たれた圧縮ヘドロの射出攻撃『ヘドロブラスト』は、溜めを行った時と同等の威力を誇っていた。攻撃はファイアマンに当たらなかったが、後方の建物の基幹部分を貫通し、ビルが崩壊する。
それを躱したファイアマンに、人型を取ったハイドロの拳が勢いよく近づく。咄嗟に腕でガードするも、アンベアーの太い腕の攻撃と同等以上の威力のパンチにより、ファイアマンは倒壊していくビルの崩落に叩き込まれることとなった。
(コイツ……とんでもねぇパワーしてやがる!体がヘドロでできている以上、炎も効きづらい……間違いなく、三人の中で一番厄介だ)
腕に残った痺れを無理やり押さえつけ、ファイアマンは瓦礫の中から一気に飛び出し、ハイドロに飛び蹴りを見舞う。ハイドロはロクに防御耐性を取らなかったために勢いよく吹き飛ばされるも、ヘドロの体は、人体と同じように傷つくことがない。蹴りによって体を変形させられても、ヘドロによって修復するのみ。
「ゲハハッ、楽しそうだな、おい!」
その上、ハイドロの他にもアンベアーとソームもいる。アンベアーの攻撃は単調な打撃技のみだが、その威力はバカにならない。耐久力もかなりのものであり、何度打ち込んでも倒れるそぶりはない。
おまけに、ソームはハイドロとアンベアーがファイアマンとぶつかる隙を狙い、的確な攻撃をしてくる。威力自体はお粗末だが、棘である以上、どんなに小さく細かくとも、それが致命傷になることがあり得る。
ソームの棘を警戒して常に全方向に神経を尖らせつつ、アンベアーのパワーとタフネスとぶつかり合い、そして未だ底が見えないハイドロの相手をする。ファイアマンの力を以ってしても、相当に厳しい状況だった。
(……半分だけ、使うか)
__________
東京の一大ターミナルである渋谷駅。その周辺区域がヴィランの暴走によって封鎖されたとなれば、交通機関への影響も大きい。渋谷駅周辺では、バスやタクシーによってなんとか帰宅しようとする多くの人々によって混乱が生じていた。
「焦らないでください!列をしっかり守って、順番にバスに乗ってください!」
警官によって交通誘導が行われるが、パニックは人の自制心を時間と共に蝕んでいく。助かりたいがあまり、粗暴な行動に出る者も、当然現れる。
避難誘導を取り仕切る渋谷警察署の署長、
「うわっ、今の音ヤバくない」
「ファイアマンが戦ってるんだって!」
「ヴィランが三人もいるの⁉︎」
「やばっ、渋谷終わったじゃん」
「渋谷事変じゃん」
(……ったく、早く逃げろよ。逃げてくれねぇと、いつまでも仕事が続くだろうが)
愚痴を心の中でこぼすが、治安のいい東京でこれだけの事件が起こることは滅多にない。興味を抱く気持ちも分かるが、もう少しだけ分別をつけて欲しいものだと思う。
(平和ボケ連中め。ヴィランがどれくらい恐ろしいか知らないから、能天気でいられるんだよ。ファイアマンがいなかったら殺されてかもしれないってこと、分かってんのか?)
表向き、警察はファイアマンが戦うことを許可できないが、その実績故に、彼が戦うことを黙認しているような状態である。宇佐美も過去に、ファイアマンが凶悪なヴィランと戦う場面を見たことがある。殺される寸前だった警察官たちを救い、そしてヴィランの心をも救って見せたあの炎は、今後も忘れることはないだろう。
(頼むから、ファイアマンの邪魔だけはしてくれるんじゃねぇぞ、一般人。早く避難しろ!)
__________
リセリアは、避難区域に取り残された人がいないかを見て回っていた。渋谷センター街を走り回り、声をかけて回る。
「逃げ遅れた人はいませんかー!」
普段は物静かなリセリアだが、こういった時は恥ずかしいなどと言っている場合ではない。オンオフを切り替え、声を張り上げる。
「誰もー!いません!かー!」
特に反応はない。特に助けるべき人がいないとなると、りせリアの役目は変わってくる。ファイアマンの助手のような立ち位置ではなく_____本格的に、戦闘に加わるのだ。
リュックから取り出したのは、リセリア専用の機関銃。特注品であるため、規格も全てリセリア専用のものとなっている。コンセプトは、『簡単に使える高威力』。
「行くよ、ラビー(狂犬)ちゃん」
センター街のすぐ側、渋谷スクランブル交差点では、今もファイアマンとヴィラン三人の戦いが続いている。リセリアにできることは少ないが、激しい戦いでは些細な行動が役に立つこともある。
ラビーに取り付けた、秋葉原のガチャポンで手に入れたいくつものアクセサリーをジャラジャラと揺らしながら、リセリアは戦場の真っ只中へと向かった。
__________
(お、怒られる……よね。見つかったら)
ルウカは電車ではなくバイクを持っていたことに、心の底から感謝した。そうでなければ、今頃家に帰ることもできず……こうして、ファイアマンの戦いを見にくることもできなくなっていた。
リセリアはかなり真剣な眼差しをしていたが、あれはあくまでファイアマンの隣に来るなという意味だろう。こうして以前のように、一人のファイアマンオタクとして来ることまでは言われていない。ルウカは、リセリアに言われたことをそう解釈し、バレずに近づこうと試みた。
(オタクにはね、退けない時ってものがあるのよ。迷惑にさえならなければ……その魂、突き通すべし!)
音からして、戦いはかなり激しい。街の破壊ぶりを見ても、ルウカが見てきた筋肉のオッサンや、猫キャラのヴィランとの戦いよりも遥かに酷い。
ネットを見ると、ヘリコプターで渋谷を見下ろしているテレビ局が報道しているが、細かいところまでは写せていない。やはり、こういったものは自分の目と自分のカメラで写すに限るのだ。
なんとか警察による避難誘導の穴を掻い潜り、無人となったビル街を駆け抜ける。そしてそのまま、音の鳴る方向へ。
(カメラOK。今日もバッチリ、推しをフィルムに収めるぞ!)
宮益坂の道路の端から顔を出し、周囲に人目がないことを確認。衝突音と爆音が鳴る渋谷スクランブル交差点に向かい、上に線路を通したトンネルを潜る。
そしてその目に映ったのは_____
「_____え?」
ファイアマンとヴィラン三人の戦いが、決定的な瞬間を迎えたところだった。
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