【おしまい】

25

 やあボウヤ。この間のチケットは役に立ったかい?そうかいそうかい。アンタにとって面白いものが見られたなら良かったよ。


 あれが《大暴食ダーバオシー》の黒狗ヘイゴウって男さ。

 アイツはそりゃあもう聞かん坊でね。いくら食うなと言ってもなんでもかんでも食っちまう。

 商売人に金を払って食道楽してるうちは可愛いもんだが、神合会の幹部に贈った特大渇貨を横取りして食っちまったときには頭を抱えたもんさ。

 仕方ないから先方にはアイツの手足を犬に食わせるビデオを撮って詫びを入れたよ。


 どうやってそんなもの撮ったのかって?そりゃアンタ、アイツを鎖で繋いで犬に食わせたんだよ。

 言葉のままさ。はは、まったくおかしなことを聞く子だねえ。

 今でも首輪が残ってたろう?ありゃ溶接しちまったから肉に焼き付いてもう簡単にゃあ外れないね。

 ともあれ仕置きがあったその日に金さえ貰えば死人も生き返らせるって医者と、最新鋭の闇義肢で儲けてる小娘が居合わせてねえ。アイツの子分からの嘆願やらなんやら色々あってなったってわけだ。


 いやあ数奇なモンさねえ。


 おっとなんだか言いたそうな顔だね。でもソイツはアンタの胸のうちに仕舞っとくといい。思ったことをなんでも口にすりゃあいいってわけじゃないのは表も裏も一緒だろう?

 賢くおなり、そして慎重におなりよボウヤ。


 さてさて、せっかく来て貰ったんだ。次の脚の話をしてやろうかね。娘々、お茶を入れ直してきておくれ。最近寒くなってきたから熱いヤツがいいねぇ。

 そうだ、さっき少し話に出て来たヤツにしようかね。

 これもまたアタシの手に余る悪ガキでねぇ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蜘蛛媛語:黒狗 あんころまっくす @ancoro_max

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ