あんころまっくす

　私の先祖が書き上げられなかった遺稿、言葉万華譚。今風に言うならば、つまりはエタってしまった作品だ。

　望むあらゆる物のレシピを懇切丁寧に提示する神具級魔導書、完全工作写本。異世界転移してきたオレはその力でひとに認められ成り上がり、国と救って貴族の地位と領地を与えられるほどになっ…

　後継者が無ければ騎士としての階級特権を失う。男兄弟の無い私は家名が損なわれるのを避けるため女でありながら蔑みと憐憫の視線に苛まれつつ騎士の道へと身を投じた。しかし戦場は男のもの…

　増量期を快調に終えた僕はたっぷりバンプアップした肉体を仕上げるべく減量期に入ろうとしていた。行うべきは有酸素運動。正直に言えば少々退屈なこの作業をこなす為に日々工夫を考えていた…

　子どもの頃、読んだ絵本のように夢の国の妖精に逢いたくて夜な夜な部屋を抜け出しては深夜の散歩をしていた私は、ある日路地裏に立っている扉を見つけてしまう。

　酒と薬で徹夜を重ねて書き上げた原稿は〆切に間に合わず突き返されてしまう。失意と憤り、限界の心身で開いた扉の先には……。

　侵略者に追われて逃げようとした抜け道への扉の先は、けれども本の並ぶ不思議な空間だった。

　勇者として異世界転移し魔王軍との戦いを始めた俺は、ある夜不思議な回廊へと迷い込む。

　尼僧姿の銀髪女、“女教皇”は非合法な活動を主とする超能力者集団の、それも拷問や戦闘に特化した攻撃的なメンバーだ。 　今度の獲物は不動産屋の裏帳簿。 　夜中にこっそり忍び込む？　…

　高校三年生。人付き合いの苦手な私もあと一年でみんなとお別れ。そう思えばちょっとしたことは我慢も出来るし大目にも見られる。 　そう思っていたある日の昼休み、ひとり体育館の犬走りに…

　昨年、先輩の高校卒業間近に付き合い始めたふたり。僕は交際が始まって初めての夏にどう対処するか四苦八苦していた。なんということだろう、彼女は筋金入りの夏嫌いなのだ。

　ドーナツ状の円環大陸ヘクサグラード。その大地を等分する六つの王国。大陸に囲まれた“内海”の中央に存在する魔王領は大陸を支配すべく侵略を繰り返し、一時は三つの王国が陥落するも第一…

　遥か古の昔より営まれて来た樵の生業。 　季節を問わず山に入る過酷な日々を営む彼らの前に立ち塞がるのは野生、気象、そして……怪異。 　それは、とある冬の日のこと。強烈な吹雪に見舞…

　昔々、大陸の東を王国、中ほどを帝国が治めると決まったばかりの頃、西の果てではまだ土地を治める諸侯が覇を競い合っていた。 　一領の主がそれぞれ小国として蠢く群雄割拠。 　そのなか…

　高一の少女ありすは近所の洋菓子店を営む親子と家族ぐるみの付き合いがある。独り身の父親と独り身の母親。ふたりの仲が知人以上に親密であることは子どもである自分たちにとっては公然の事…

　２－Ｃの凪志美は幼馴染の良成を振り向かせたくてあの手この手で押すのだがどうも上手く行かない。そこで友だちに意見を求めることに……。

お姉ちゃん好きな良成《よしなり》くんと幼馴染の凪志美《なじみ》ちゃん。その恋の行方の一ぺージ。

　物心つく前に亡くなった母。 　物心ついた頃には放蕩に明け暮れていた父。 　あからさまに散財されていく資産。 　誰がどれほど言っても曖昧な返事で誤魔化してきた父は、ある日とうと…

　弟子は常々師匠の慧眼に感服していたが、あるとき「あの老人は預言書の“古代遺物”を隠し持っている」という噂を耳にする。

　あらゆる悪、謀略と姦淫と暴力と、おおよそ人目を憚るものどもの跋扈するひとときばかりの世界。その名は夜。 　闇に乗じて狼藉を働く者どもを、同じように闇から襲う存在の噂がこの街には…

　あたしことハンドルネーム：キョーコは食べるのが大好き。お酒も大好き。だからと言っていつでもどこでも高くて美味しいものを食べたり吞んだりするわけじゃない。 　お高いものはハレの日…

　膨大な書類仕事に追われていた少年は、老獪な喋りをする少女から“猫の手”を貸してやると提案される。

　山奥の貧村に現れた獰猛な大岩熊のつがい。そしてそれよりもさらに邪悪な魔王の眷属と言われるオーク族。 　村を捨てるしかないのか？　悲壮な覚悟を決めていた村人の窮地を救ったのはひと…

　長年ストーカーとして付きまとってきた男の息の根を止めるときがとうとうやってきた。これは誰にも知られちゃいけない茶番劇。

　大魔族“怪鳥公”の眷属“怪鳥の姫騎士”。彼女らは誰もが一様に美しく、翼を持って自由に宙を舞い人族の戦士たちを苦しめる。 　戯れるように襲い来る彼女らに対して彼らが【焼き鳥にして…

　親父が死んだ日、彼女は俺の前に現れた。呪いは俺に引き継がれたのだという。降りかかる女難は十一度。俺が達せられなければ次世代にまた引き継がれるのだそうだ。

　帝国大魔導学院の生徒アズミは超難関試験を乗り越えた秀才だったが、如何せん身ひとつで旅をしてきた独り身ゆえに貧乏だった。難易度の高い授業をこなしつつ下流街の酒場で給仕として日銭を…

　帝国立大魔導学院の最上位特待学級。帝国の騎士貴族に連なる令息令嬢らのみが所属を許されたそこにあって頂点の異質さを醸すふたりが織りなす、でもただの雑談。

　とある田舎の場末の酒場。カードも揃わないような最果てで行われた賭け事はなんとただのコイントスだった。

　ちょっと羽振りの良い町娘と裏社会に暗躍する殺人者というふたつの顔を持つ彼女には、実はもうひとつの顔がある。

　近隣の領主へ親書を届ける任務を負った歴戦の職業騎士。彼は旅に出てから何者かにつかず離れずあとを付けられていることを察していた。 　ある月の明るい晩、休みを取って腹拵えをした彼は…

　生徒会の小さな書記、ニノマエは長い黒髪をヘアバンドでぴっちり留めた吊り目に丸眼鏡の不愛想で神経質な少女。 　彼女と共に生徒会で働く見るからに真逆の副会長は筋骨隆々の長身に真っ…

　それは静かな夜のこと。 　大組織に与せず己の腕で娼館を切り盛りする女将“鼈甲”の屋敷へ異様な三人組が乗り込んで来た。 　大陸の裏側である黒社会。その中で七つの街の娼館を一手に…

　高校生、逆峠 左右輔（さかさとうげ そうすけ）には悪癖がある。 　高校生、常春 朔良（とこはる さくら）にも悪癖がある。 　困ったふたりの、それは何度目かのエイプリルフール。…

短編です。

　実習棟の片隅にある文芸部。 　幽霊部員がほとんどを占めるなか部室の主のように常にそこにいる部長の先輩新田さん。 　読書も創作も大して関心が無いのに入部してしまい、なんだかんだで…

　職もない彼女友人もない気力もなければ金もない、そんなニートのタカシはある日ネットの中で怪しげなポップアップに遭遇する。 “希え” 　なにもない俺には希うような想いすらない。…