棄てていないはずなのに棄てた童貞を取り戻せ!?

 ナチュラルボーン・童貞である大学3年生の“僕”はあるとき、同じ童貞であり、刎頸の友である永野から切り出された。「いっしょに童貞を取り戻してほしい!」。友がすでに童貞ならぬ身の上であることに衝撃を受けつつ話を聞いてみれば、永野は自身が出遭った不思議な男から持ちかけられたのだという。性交せずに童貞を棄ててみないかと。

 あらすじからわかる通り、シュールなネタなのですよ。でも、そこへ学生にノートのコピーを売る通称「ノート屋」さんが事業拡大し、“童貞廃品回収”なる商売を始めたというもうひとつのシュールをぶっ込むことで、お話は一気に加速するわけです。

 その起爆剤こそ、外連な弁舌閃かせる怪人“ノート屋さん”なのですが、扇動者としてとにかくいい仕事をしていて、そのキャラクター性に目を惹きつけられるのです。

 ネタとキャラがそれぞれを引き立て、お話を追い立てていく。まさに理想的な関係を魅せてくれる、池袋のドメスティックな話題もありありなシュールコメディ、おすすめです。


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)