透明感のあるディストピアの日常
- ★★★ Excellent!!!
ある日、突然滅んでしまった世界と、そこへ取り残された僕。そして少女(シノ)。
平凡な日常は続く、大勢の人が消えても。
みんなに知られた有名な人だろうと、誰かにとって大切な人であろうと。地球の歴史や宇宙のことわりには何の影響もないのだと、静かな哀しみを覚えました。
透明感のあるディストピアの日常。
人が消えてもいつもと変わらない世界が広がる悲しみと、他者(一彦)にとっての日常が別の誰か(シノ)にとっては非日常である可能性。
シノの気持ち、ラスト読んでて痛かった……。
彼女と同じ境遇になったことはないけど、あの晩、シノが一彦へあんなこと(産めるよ、とか)を言った気持ちはとてもよくわかる。それは青さとか若さではなく、理由があったから。
生きるって、真面目に考えると残酷なことです。でも、産まれたら生きてくしかなくて。一彦の「今日」はまた続くのでしょう。
読み終えてから瞼を閉じて、そっとため息がこぼれました。とてもよかったです。