第46話 未来へ

「もー、カズマさぁ、毎回、カズマしか写ってない自撮り動画ばっか、送ってこなくていいからねぇ」

 カメラの向こうで笑っている美少女。

 アンジュ。普通の子の年齢で5歳になった。見た目や中身は15歳。真っ白なヒーラーは、途中まで普通の子の3倍の速さで成長する。18歳まで。そして、その後は普通の速さになり、卒業して外に出られるのだ。

「誰? 叔父さん? とか言われてるわ、友達に」

 あはははは、そう言って無邪気に笑っている。

 時々、こちらからの写真や動画をシエルさんやサトルさんに渡して、彼らがアンジュを撮ったものを持ち帰ったりしているのだ。

「あと一年で卒業なんだねえ」

 感慨深そうに、明日香さんが言う。

「親戚の叔母さんの気持ちになってるだろ」

 一磨さんがからかうと、

「親戚のお姉さん! な!」

 明日香さんが一磨さんを軽く叩いた。



 そう、アンジュが生まれて5年が経った。

 この5年間で変わったことと言えば、明日香さんがデザイナー仲間と結婚したこと、それから、花梨がめでたく高校を卒業し、専門学校も卒業し、なんとプログラマーになっていること(中身は大して変わっていない)。そして、私は、ある人から猛アタックを受け続け、ついに2年前から同棲するようになったことだ。



「サトルさん、シエル、もうアンジュのとこ行く時間でしょ? 俺、占い代わるから」

 買い物から帰ってきたカイが、コーヒー豆を片付けながら言う。

「あ、トーコ。今日晩飯どうする?」

 そう、こいつだ。こいつが、なんと、私の彼氏様。

「ん〜、特に考えてない。何食べたい?」

「じゃ、俺のカレーな」

「おー、ありがとー。助かるー」

 そんな会話をしている横で、サトルさんが笑う。

「もう夫婦の会話みたいね」

 そう言って。


「カイのこと、本当に心配してたからね、サトルは」

 シエルさんも笑ってそう言う。

「学園を出て、普通に生活ができるんだろうか。能力をやたら使わないだろうか。影を見つけて攻撃しないだろうか……。もう、心配し始めたらキリがなかったわ」

 サトルさんが頷いて言う。

「もう、若い時とは違うの! 俺幾つだと思ってるのさ!」

 カイが照れくさそうに、言うので、

「23歳は、まだまだ若いですけどね〜」

 と、私がからかった。


 あれから、幾つもの戦闘があった。

 その中で、私達仲間の絆は、さらに深まっていった。


「ねえ、アンジュはさあ、卒業したら、うちらの仲間として戦いに参加するのかなぁ」

 シエルさんたちがアンジュのところへ行ってしまってから、花梨が言った。

「……」

 皆、黙った。

「……そりゃ、参加してくれればパーティはより強くなるけどさ……」

 明日香さんが一磨さんを見る。

「俺は反対! アンジュを危険なことに巻き込みたくないだろう?」

 皆頷く。アンジュを我が子のように思っている一磨さんは、特にそう思っているに違いない。

「でもさ……」

 カイが口を開いた。

「その為に与えられた能力なのかもしれない、って俺は思ったりするんだよね」

「カイ……?」

 私はカイのうつむき加減の顔を見た。

「皆、望んで手に入れた能力じゃないじゃん? 誰も好き好んで闇と戦いたかったわけじゃない」

 彼は続ける。

「でも、この力があるから、自分たちの力で大切なものを守れる。……だから、これは神様が俺たちに与えた『ギフト』なんだと思う」

「『ギフト』って、超能力を持ってる人によく使われる言葉よね」

 明日香さんが言う。

「アンジュもギフトを貰った一人なんだよ。だから、『戦わなきゃいけない』じゃなくて『大切なものを守るために戦える』ってことなんだと思う」

 カイがそう言うと、一磨さんが驚いたように言う。

「カイ……大人になったなあ」

 あはははははは。皆の笑い。


「ほら、みんな、昼休みおわっちゃうよ? それぞれ仕事に戻って下さい」

 カイは、笑ってそう言った。



 闇は日々作られていく。

 きっとこの世から闇が消えることはない。

 世界中の人が皆平和でいられる世界。

 それは単なる理想でしかないのかもしれないと思う。

 どんな人の心にも闇は存在し、「影」が濃くなって、本当の「闇」になってしまう。

 その環境が整ってしまえば、闇の集団は簡単にできてしまう。

 

 私たちは、これからも戦う。

 パーティ一つ一つの力は小さくても、世界中に私たちのような能力を持つ者がいて、やはり戦っているのだろう。


 大切なものを守るために。



 〈了〉

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プリズム 緋雪 @hiyuki0714

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