夢に巣食う【鳥】と呼ばれる夢魔を狩る、退魔師【猫】──彼らは夢を渡り、悩める人々を穏やかな眠りへ誘っていた。
ある日、女子高生:春告 要女(かなめ)と過保護な兄:守は、両親の葬儀後に血縁を頼り引っ越しする。
叔父は、夢を司る神様を祀る神社に勤める神主さん。おかしな夢を見た要女は、相談をもちかけるも──
夢とは、主の記憶や精神状態に左右されるものですが⋯⋯それに至る側面が、現実世界の動きも相まってピースがはまる感覚に、ついつい読む手が止まりません。
人間模様&心の描写が秀悦です。
街の地形や地名にも、一貫した分かりやすさがあります。人の住むどこか懐かしい雰囲気、そこで起きる事に吸い込まれました。
そこに夢魔と退魔師のファンタジー要素とか、最高の極みでしょう⋯⋯!
和風異能系が好きな方、特に必見です。
見るっきゃない。是非ご一読を❀
両親を失ってからは、兄・守の過保護が更に酷くなったような気がする。
「遅くまでうろつくんじゃないぞ。迷子になったり変なやつに絡まれたりしたらどうするんだ」
「分かってるよぉ、お兄ちゃんは心配しすぎなんだって」
端から見れば微笑ましい兄妹のやりとりだ。
しかし、兄の守は、妹・要女の『緑の瞳』を心配し、要女にとっては少し息が詰まるような気持ちになる。
(あの冷静なお兄ちゃんが、そんなことになるなんて思いもしなかった)
しかし、運命というものは残酷だ。
要女は四年前と同じ、連日の高熱に苦しみ、夢と現の間でうなされている。
(……また、あの気配がしたらどうしよう)
夢の中で“何か”に呼ばれていた気がした。
ただ、一つだけ予感しているものがある。
(もし、今夜も夢を見たら)
取り返しのつかないことになるかもしれない。
昨夜は『追い払えた』が、今夜はもう――。
「大丈夫だ、兄ちゃんが一緒にいる。お前が寝付くまで此処に居るからな」
これは、過保護な兄と自立を目指す妹が、暖かな春を迎える物語。