第4話 おまけに、笑える後日談

 母が退院して半年後、わが家では祖父母のささやかな合同法要が行われた。

 法要のあと、私たち家族は祖父母の思い出話に花を咲かせた。

 母がポツリと言う。

「死んだお祖母ばあちゃんは、それにしても始末しまつ(節約)が好きな人だったよ。一円、十円の小銭でも大事にする人だった」

 父が黙ってうなづく。私も父も無口で、わが家はすべて母の采配で動いていた。

 母が言葉をつづける。

「お祖母ちゃんは、特にアンタ(私のこと)のことを心配していた。くだらない本ばかり買いあさって、どうしようもない子だよ、浪費癖をつけさせちゃいけないよというのが口癖だった」 

 私はそれで合点がいった。

 あの日、国鉄カード下にあらわれたのは、「占いなんかにお金をつかうとは、ああ、もったいないねえ」という祖母の節約心がなせるであったと。私に対する戒めを伝えたいがためであったと。

 私は祖母の遺影に笑いかけた。

「お祖母ちゃん、心配しないでいいよ。もう出てこなくていいからね」


―了―

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本当にあった世にも不思議な物語 海石榴 @umi-zakuro7132

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