概要
曹丕と曹植。尊貴な立場の兄弟にまつわる、どこか悲しい物語。
曹植というと、何かと「七歩の詩」が有名で、兄・曹丕が曹植にわざと難題を出して七歩の間に詩を作れと言われたというエピソードが特に印象深いのであるが、これはどうも世説新語による創作であるらしい。この「兄弟いじめ」の真相としては、曹操の死の直後、曹彰が曹植を立てようとしたらしい動きがあったことなどにより、曹丕の猜疑心を刺激してしまったのが原因であり、曹丕が曹植を冷遇したのは、その反動と言える。ともかく、今回取り上げたいのが、創作された偶像としての曹植ではなく、実際の彼の作った二篇の詩賦である。まず、その一つが「野田黄雀行」である。制作年はおおよそ220年ごろであり、曹丕が魏朝の皇帝として即位した頃である。