チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【30】何たる迂闊!【なずみのホラー便 第118弾】
なずみ智子
何たる迂闊!
【問題】
苦節21年。
彼女いない歴=年齢で、悶々と妄想を膨らませ続けていた大学生の英太さんにも、この世の春がやってきました。
彼の初彼女は、同じ大学の同級生。
正直なところ、彼女より可愛い女の子は大学内にゴロゴロしていましたが、英太さんは彼女の控え目で、あまり男性慣れしていないところも好きでした。
もうすぐバレンタインデー。
去年のクリスマスは、彼女の家の都合で一緒に過ごすことができませんでしたが、バレンタインデーこそは一緒に過ごしたいと思い、英太さんは彼女にLI○Eでメッセージを送りました。
しかし、既読スルーのままです。
英太さんが電話をしても、彼女は出てくれません。
「?」と思った英太さんは、後日、大学内で彼女にばったり会った時に話しかけようとしました。
ですが、彼女は真っ赤な顔で英太さんを睨みつけ、「最低! もう私に話しかけないで! この変態!」と怒鳴りつけてきたのです。
彼女の態度に面食らうしかなかった英太さんでしたが、LI○Eのトーク履歴を見直した時、その理由が分かりました。
自身が犯した取り返しがつかないうえに迂闊にも程があるミスに気づいた英太さんの顔も真っ赤になってしまいました。
さて、英太さんはどのようなミスを犯したのでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : 英太さんがLI○Eで送ったメッセージが、彼女さんの怒りというか、別れの原因になったの間違いなさそうですね。彼女さんの「変態!」という言葉から推測するに、英太さんはあまりにも直接的なメッセージを送ってしまったんでしょうか? 例えば、”バレンタインデーにこそ、絶対にエ○チしようね”とか……
チエコ先生 : NO。英太さんは、悶々と妄想を膨らませ続けてはいたけど、実生活においては湧き上がる性欲をちゃんとオブラートに包める青年よ。
キクちゃん : ……となると、何だろう? あ! 英太さんは初彼女ができてうれしかったようですが、問題文には「正直なところ、彼女より可愛い女の子は大学内にゴロゴロしていましたが……」とあるから、英太さんは彼女さんと他の女の子の容姿を比較するようなメッセージを送ってしまったのでしょうか?
チエコ先生 : NO。頭の中で女性を比較するだけならまだしも、それを実際にメッセージで送るなんて、デリカシーがないにも程がある行為をしてしまう英太さんではなかったわ。
キクちゃん : うーん、ですが……英太さんが送ったメッセージが原因で、彼女さんが顔を真っ赤にして怒ってしまったのは事実なんですよね。問題文の「去年のクリスマスは、彼女の家の都合で一緒に過ごすことができませんでしたが、バレンタインデーこそは一緒に過ごしたい」は、実際のメッセージの”原文ママ”でなくとも、特に怒るような内容じゃないように思います。まだ彼氏ができたことがない私から見ても、そんなにおかしいとは……
チエコ先生 : 第30問めにして、読者さんにキクちゃんの彼氏ナシ設定が判明したわね。それはともかく、英太さんが”本当に送りたかったメッセージ”の内容そのものには問題はないと先生も思うわ。
キクちゃん : 内容そのものに問題がないということは、変換ミスや誤字脱字があったんでしょうか? 今は、パソコンでもスマホでも予測変換機能がありますけど、それでも見直しを怠れば変換ミスや誤字脱字が見つかったりしますもんね。
チエコ先生 : 正解までもう一歩よ。……と言いたいところだけど、今回の問題の解答は、大人向けの要素をほのかに含んでいるから先生が誘導するわね。英太さんは予測変換機能で一番最初に出てきた語句を選択し、迂闊なことに見直しを怠ったまま、彼女さんにメッセージを送ってしまったの。……私たち女性の体には、クで始まりスで終わる五文字の部位があるでしょ。
キクちゃん : ………………やっと分かりました。本当に今回は大人向けですね。英太さんは、クリスマスと文字入力したつもりでしたが、予測変換機能で一番最初に出てきたその五文字を選択したままメッセージを送ってしまったんですね。
チエコ先生 : YES。正解よ。ちなみに予測変換で一番最初にその五文字が出てきたということは、英太さんはその言葉で検索をしたことがあったというわけよね。スマホ一つで刺激的なものをあまりにも簡単に目にすることができるのはどうかと思うけど、男の子が異性の体に興味を持つのは自然なことだし、抑圧しすぎると後の反動が怖いし、その塩梅が難しいところね。
(完)
チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【30】何たる迂闊!【なずみのホラー便 第118弾】 なずみ智子 @nazumi_tomoko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます