インタビュー

ずっと一人でやってきたんですよ。

親にも反対されてたし、地元の同級生たちにもいい顔されなかったっていうか、なんて言うんですかね、異物扱い?みたいな。

だから一人でギターだけ抱えて東京出てきて、見てろよー!って。

路上で一人で歌ってたら、きっと私の歌に気付いてもらえて、売れるんだって馬鹿みたいに信じてました。


まぁ、そんな夢みたいなことあるわけなくて、ライブハウスでバイトしながら、時々ステージ上がらせてもらって、何とか生き繋いでたんですよ。

ほんとに、生き繋ぐってのがピッタリ。

音楽のことだけ考えて生きていたかったのに、毎日の生活でいっぱいいっぱい。

新しく作った歌も、必死すぎてダサかった。


何とかしがみついて、インディーズで何枚かCD出したけど、売上なんて雀の涙。

だからそんな時にメジャーデビューしないかって声かけられて、信じられなかったんです。

だって、売れてないのに、どうしてメジャーデビュー?って。

その頃はもう、溢れかえるくらいあった自信なんて枯れ果ててましたし。


声をかけてくれた人は、私が一番沈んでた時に作って一回だけ歌った音源を聴いてくれたみたいで、それがファーストシングルの『星屑の叫び』なんですけど。

それを聴いていけると思ったなんて言われても、一番沈んでた時の曲なんですもん、どうしていいか分からなくなっちゃって。


そんな時、彼女に出会ったんです。

出会ったっていうか、一回しか、三十分くらいしか一緒にいなかったけど。

天気もそんなに良くない夜中に、一人で、暗い公園のベンチに座って歌ってたんです。

夜だったから近所迷惑にならない程度に、口ずさむ感じで『星屑の叫び』を歌ってて。


そしたら彼女が突然一万円札を突き出してきて、「これで今の曲もう一回歌って!」って。

もうビックリしちゃって。

しかも彼女、たぶん泣いてて、だから……まぁいいか、化粧もすごい崩れてて、それで一万円札ですよ、鬼気迫る表情で(笑)

今まで歌ってきて、そんなこと言ってくる人なんていなかったから、驚いたけど、嬉しかった。


それで、あんまり声出せなかったから、かなりアレンジして歌ったんです。

そうしたら彼女、大号泣。

大の大人がそんなに泣くのかってくらいに大号泣で。

歌い終わったら、ぐっちゃぐちゃの顔のまま「主人公はキミだ」なんて言うんです。


私、きっと、誰かにそう言われたかった。

主人公じゃないなんて歌っていたって、心のどこかで諦められてなかった。

私は主人公で、誰よりも光る一等星なんだって。


だから、彼女からそう言われて、その言葉を真実にしようって思ったんです。

彼女の物語の主人公であり続けるために、頑張ろうって。


私にとってみれば、彼女の方が主人公でしたけどね。

何かに打ちのめされていた彼女が、主人公が、私の歌を聴いて再び立ち上がるっていう。

ふふ、熱いでしょ?


その頃には雲もどこかに消えて、空に月と星が瞬いていて、何もかもが自分を応援してくれている気持ちでした。


私がメジャーデビューを決めたのは、彼女のおかげなんです。

本当にありがとう。

これからも頑張るから、見ててね、聴いててね、Ayumiさん。

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主人公はキミ 南雲 皋 @nagumo-satsuki

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