鬼のために生きるか、死ぬか。

一三五四年四月、一人の名宰相が死んだ。
名を北畠親房。またの名を准后。息子の顕家の将才が著名であるが、彼もまた豊かな知見と謀才を持つ名臣であった。

『年明けこそ鬼笑う』
その老人の不気味な遺言が、南北朝に別れた日ノ本を動かす。
すなわち、足利尊氏の子でありその弟直義の養子、直冬の挙兵。
観応の擾乱から始まる足利の骨肉の争い、建武の乱から始まる北畠家との因縁も佳境を迎えつつあった。

果たして鬼の意味するところは、何か――?

基本は中央の戦いがメインとなりながらも、関東からの視点を中心にしてくれるのが、この作者さんのシリーズを追っている者にとっては嬉しいサービス。

これはあまり語られることのない太平記の後の物語。
その流れに詳しくない人でも大丈夫なよう分かりやすく、短くまとめられた構成となっているので、是非とも身構えずに手に取っていただきたい良作です。

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