説明は多ければ良いわけではないと再認識

 作中の時代は、複雑怪奇で分かりにくい。
 たとえば、登場人物の名前や舞台を、中世ヨーロッパ風にして、歴史に詳しくない編集者に読ませたら、「設定と人間関係が複雑すぎる」「人物の行動に合理性がない箇所が散見される」「ストーリーにリアリティがない」などと言われそうな時代である。
 理解と説明が難しい時代なのだ。
 そういう書きづらい時代を題材に選んだ作者だが、話を絞り込むことでうまく対応できているように思われる。
 何というか、「説明しないこと」により、とくに、この時代にくわしくない読者を惑わせないことに成功しているように思う。その点、勉強になった。

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