最後の記録
骸骨のような顔をした両親に居間を通され、男は彼女の前で正座しました。
神妙な顔つきでゆっくり彼女の顔を見つめます。その顔は男の知っている通り、柔らかな雰囲気をまとい、笑った人形のようでした。
男は内ポケットからリングケースを取り出し、そしてじっとそれを見つめた後、ゆっくりと丁寧に彼女の前に置きます。
そしてその真横に、内臓のような色とりどりの花束を一緒に添えました。
すると見慣れた腕時計が彼女の側に置いてあるのが目に映りました。
男はそれをゆっくり手に取ります。
それは彼女が毎日肌身離さずにつけていたものだったのです。父親から成人式の日に買ってもらったものと以前教えてくれました。
男はその時計を取り、じっと見つめて、彼女の肌の温度を感じ取ろうとしました。しかし、男の手の中にあるのは冷たく、無機質な金属に過ぎませんでした。
その時計は等間隔にただ針を刻むだけ。
そこで男は違和感に気がつくも、その正体はすぐに判明しました。
秒針を目で追います。
25、20、15・・・。
その時計は針が逆向きに進んでいたのです。
そんなに長い間使っていないはずなのに壊れてしまったのでしょうか。しかし、たとえ壊れてしまったとしても針が止まるわけではなく、むしろ時を遡るなんてあるのでしょうか。
不気味な現象に首を傾げつつ、腕時計を元の場所に戻し、改めて男は彼女に向き合います。
そしてゆっくり目を閉じ、手を合わせました。
恋の記録 流音 @RyuGne
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