第5話 ピリついた会議室
「会議中のところ失礼します。こちらサボットさんとそのおつきの方です」
シアは会議中にも関わらずドアを開けサボットと、執事のことを紹介した。
大きな机一つと椅子が4つのとても質素な会議室だ。
「……もしかして君たちはあの人だったりするか?」
サボットが無言の視線が耐えられなくなってきたとき、一人の男から問いかけられた。
問いかけてきた人物はこの場の中で一番肩幅が広く、がたいが良さそうな男だ。
サボットは周りからの視線に屈することなく平然と答える。
「あの人とはなんの事を意味するのかわかりませんが、以前のリーダーとは仲良くさせてもらってました」
その言葉を聞いた男は目を見開き、そこからは涙が浮かんでいた。
「グス……すまない。私は現リーダーのホメナン。君が言う以前のリーダーは私の先々代なんだ。まさか君たちがあの救世主だとは……。君たちのことを歓迎しよう」
男は涙で情けない顔になっているが、続く言葉からは組織のリーダーたらしめるものがわかる。
サボットはそんな彼を高く評価した。
「あぁ……じゃあ早速だが、今この国で起こっているクーデターについて聞かせてもらえるか?」
サボットは、シアが用意した簡易用の椅子に座り聞いた。
ホメナンと、その他会議をしていた者は他国にいた人がなぜクーデターのことを知っているのか疑問に思った。だが、皆サボットの信念のある鋭い目を見てそんな事を考えるのをやめた。
ある一人の男を除いて。
「ちょっと待て。リーダーはお前が何者でどうやってここに来たのかわかってると思うけど、俺たちゃお前は不審者にしか思えねぇ。自己紹介ぐらいしろよ」
サボットと机で向かい合うような形で座っており、服がところどころ破けていて色が黄ばんでいる小汚い男が睨みつけながら聞いた。
サボットは攻撃的な口調で言われ腹が立ちそうになったが、彼が言っていることも一理あると思い口を開いた。
「僕はサボット。さっき聞いてたと思うけど、ここの先々代のリーダーと仲良くさせてもらっていただけの関係だよ」
サボットは平然と自己紹介をした。
小汚い男は、サボットの自己紹介が具体性にかけるものであったため何か感づき、肩から力が抜け椅子の背もたれに寄りかかった。
「ラリア。もういいかな」
止めたのは先程、リーダーだと名乗ったホメメロン。
「あぁ……。すまない」
「サボット様。早速ですがクーデターについてご説明させてもらいます。クーデターの首謀者はヒムラインという名の男。そいつの導きにより現在メモリオン王国はクーデター派7、国王派3で分裂してしまっています」
「なぜそこまでの人間が敵に加担しているんだ? この国になにか不満があるのなら、別の方法だってあったはずだ」
すべて話し終わるまで質問はしないでおこうと思っていたサボットだが、聞かされる内容が衝撃でありつい口を挟んでしまった。
ホメナンはその質問に相づちをしながら「それなんです」と言い、続ける。
「クーデター派についた者たちは別に国に不満があったわけではありません。あいつが持っている武器が国民の脅しになり、仕方なく従っているものが多数です」
ホメナンは悔しそうに歯ぎしりをしながら続ける。
「その武器は稀に古代の遺跡から発掘される、長さ1m程度の空洞の筒です。あれを1万年に一人の天才ヒッヅが魔改良をした末できたのがそれです。あれからは、火が出たり刃が出たり、さらには変形したりと……クーデターに反対した王族や、反発した国民、さらには我々の偵察へ行った数多くの死者が出ています」
サボットはホメナンが話し始めたそのクーデターの実態に鳥肌が立ったが深呼吸をし、深く椅子に座り聞き入る。
「これはクーデター派にスパイに行っている者から入った情報ですが、あいつにはバックにあの血の奇人がいるのだと聞きました。武器もありますが、血の奇人がいるのだとなるとこちらも手を出せなくて……」
血の奇人がいる。
サボットはその言葉を聞きある男の顔を思い浮かべたが、すぐに思考を一掃する。
あいつらは自ら人間に接触をするような奴らじゃない。それを踏まえて出てきた答えは……。
「その血の奇人は偽物だ」
「「「は……?」」」
サボットは周りの鋭い視線に屈することなくこう続ける。
「血の奇人を実際に見て確認したわけじゃないろ? 相手に虚偽の報告をして混乱を生み出すと言う作戦もしれない。それならスパイに行ってるやつが怪しいと、そうは思わないか??」
サボットは姿勢を低くし、周りにいる人たちを下から睨みつけるような形で聞いた。
周りの人間は無言でそんなはずが無いと、口元に手を当て考えている。
だが、そんな沈黙を破った男がいた。
「おい。じゃあてめぇは俺たちの組織に裏切り者がいるって言いたいのか??」
サボットのことを不審者と罵った男、ライアが低く威圧感のある声で問いかける。
サボットはその問いかけに両手を上げ笑いながら答える。
「いやいや。ただの可能性の話だよ」
「………可能性だったとしても今の言い方こそ、俺たちを混乱させるような言い方だった。お前がクーデター派のスパイ何じゃないか??」
ライアの発言に会議室の空気が重くなり皆、疑心暗鬼になった。
そんな中、サボットは慌てずこう続ける。
「そんなわけないだろ? 取り敢えず、僕はもうここらへんで離席させてもらうよ。今日はもういい時間だ。君たちも休んだらどうだい?」
サボットは席を立ち、不敵な笑みを浮かべながドアから出ていった。その後をタキシードをきた執事が続く。
サボットがいなくなった会議室。
そこには、相手を睨めつけることしかできない男と、がたいの良い男がなんの言葉も発さずお互い胸ぐらを掴んでいた。
罪と一等星 でずな @Dezuna
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