心に迫る物語

人が人を愛することの「多様性」について描かれているのですが、大変読みやすい文章と惹き込まれるストーリー展開、そして、丁寧に選び抜かれた言葉の数々によって紡がれていく会話に、気がつけばどんどん没入するように物語を読み進めていました。

何気なく(そして悪意なく)価値判断の基準としている「ふつう」とはいったい何なのか。主人公が壁にぶつかりながらも真摯に向き合おうとする姿は、とても素晴らしく、好感が持てるのですが、果たして我が事に置き換えた場合、自分はきちんとできるのだろうか?と問い返されているようにも思います。

昨今は「多様性」の尊重が指摘され、多くの人が一見理解を示しているように思われますが、まだまだ言葉だけが一人歩きしているような印象で、多様性を尊重する、真に人間を理解するというのはどういうことなのか等について考えさせられます。

愛することはとても尊い。だけれども、それはそう簡単なものではなく、タイトルにある「薄氷」のような、とても繊細な関係性の上で、理解しようと対話を重ね、互いを尊重し、思いやるからこそ奏でられていく、そんなふうにも思いました。

まだ拝読している最中ではありましたが(8話まで読了済です)、心に感じるところがとても多く、レビューいたしました次第です。
これからのストーリーも楽しみに拝読させていただきます。

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