性的マイノリティーを取り扱った作品です。そういう作品を読んだことはあるのですが、もっとマジョリティーに挟まれながらもがき苦しむ若者の姿を、極めてリアルに表現されています。
多様性を認めることは素晴らしいことですが、所詮はきっと「分かったつもり」になっているに過ぎないのかもしれません。良かれと思ったことは相手を傷つけるかもしれない。そんな繊細な心に踏み込むことは容易ではないし、できれば避けて通りたいと実際のところ思ってしまうかもしれない。
しかし、マジョリティーの主人公はそこにあえて踏み込み成長していきます。その成長の姿は、多くの読者の気づきを与えるでしょう。
美しいタイトルが絶妙。作者様が伝えたかったメッセージは一体何なのかを、皆様も感じていただければと思います。
人が人を愛することの「多様性」について描かれているのですが、大変読みやすい文章と惹き込まれるストーリー展開、そして、丁寧に選び抜かれた言葉の数々によって紡がれていく会話に、気がつけばどんどん没入するように物語を読み進めていました。
何気なく(そして悪意なく)価値判断の基準としている「ふつう」とはいったい何なのか。主人公が壁にぶつかりながらも真摯に向き合おうとする姿は、とても素晴らしく、好感が持てるのですが、果たして我が事に置き換えた場合、自分はきちんとできるのだろうか?と問い返されているようにも思います。
昨今は「多様性」の尊重が指摘され、多くの人が一見理解を示しているように思われますが、まだまだ言葉だけが一人歩きしているような印象で、多様性を尊重する、真に人間を理解するというのはどういうことなのか等について考えさせられます。
愛することはとても尊い。だけれども、それはそう簡単なものではなく、タイトルにある「薄氷」のような、とても繊細な関係性の上で、理解しようと対話を重ね、互いを尊重し、思いやるからこそ奏でられていく、そんなふうにも思いました。
まだ拝読している最中ではありましたが(8話まで読了済です)、心に感じるところがとても多く、レビューいたしました次第です。
これからのストーリーも楽しみに拝読させていただきます。
丁寧な感情で綴られる、人と人がわかり合う難しさ、多種多様とはいえマジョリティに偏った世界での生きづらさ。善意で差し伸べた手が、意に反して誰かを傷つけていた理不尽。
こう書くと哀しくて冷たいお話なのかなと思いますが、むしろ逆で、登場人物たちが人間が好きで、人と人との関わりが大好きなのが伝わってきます。寂しいけれど温かい、そんな印象です。
迷って悩んでも、好きな人のために手を伸ばし続ける登場人物たちが素敵だなと感じました。
漠然と人間関係に生きづらさを抱えているすべての人にとって、この作品の中にそれぞれの”共感”が見つかるといいなと思います。
まだ読み途中ですが、どうしても書きたくなったので書きます。
ポリアモリー(合意の上で複数人と恋愛交際すること)をテーマに、同性愛、アロマンティック(他者に対して恋愛感情を抱かないセクシャリティ)などなど、L・G・B・Tの四つには収まり切らないセクシャルマイノリティについて描かれた作品です。
個人的に、男性一人に対して女性の恋人が複数といういわゆるハーレム物ではなく、女性一人に対して男性の恋人が二人、女性の恋人が一人というところが好感が持てます。
「恋愛は男女で、一対一でするもの」そんな常識に囚われてしまっている人は是非、この作品を読んで自分の中の常識をぶっ壊していってください。