主人公の「通訳」「冒険」そして「恋」、すべてから目が離せなくなる

主人公は、両親を亡くし、自らの力で一生懸命生きてきた女子大生の杏葉。
通訳になるという夢に向かって頑張ってきた彼女ですが、理不尽な現実に直面します。
そんな、挫けてしまいそうな境遇にありながらも、信念を見失わず前向きな杏葉さんがとにかく魅力的で、物語の展開と共に彼女のいく先を見守っていきたくなります。

杏葉が転移したのは、獣人の国と人間の国が対立し、今にも戦争が起こりそうな異世界の地。
獣人と人間は互いの言葉が通じないので意思疎通も望めません。

言語の違うバラバラの種族が、十分な意思疎通を図ることができないまま、対立を深めていっている――現実世界にも通ずるような対立構造にハラハラしていたのですが、獣人と対談した際に放った杏葉さんの言葉――「言葉が分からないだけで、心も分からないとは限らない、と思いませんか」――がとても胸に刺さりました。

深みのある世界観と、魅力的な登場人物たち。
獣人と人間の「通訳」杏葉さんの活躍やこの世界の行く先はもちろん、彼女の恋模様も楽しみのひとつ。
その面白さを語り始めれば話がつきないので、これはもうぜひ直接ご覧になっていただきたいです。

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