最終話 戦隊、地球に行きて異世界に帰る

 「……久しぶりの実家だ、やっと戻って来れた」

 ムーナを倒してから一年後、輪人は久しぶりに日本の大地を踏んでいた。

 目の前の和風な一軒家は輪人の実家だ。

 「ほ~ら桃太郎ももたろう♪ ここがパパが生まれたお家ですよ~♪」

 桃花がピンクの産着を着たピンク髪の赤ん坊をあやしながら微笑む。

 「懐かしいね、日向ひなたちゃんも喜んでるよ♪」

 純子が女の子の赤ちゃんを片手に抱いた姿で呟く。

 「懐かしき大取市ですわ♪ メアリーとアンはぐっすり寝てますわ♪」

 ヴィクトリアはベビーカーに乗せた、黄色い産着の双子の女の子の赤ん坊を見て微笑む。

 「輪人~♪ あっちに帰る前に,メキシコに行くのも忘れないでよね♪」

 ヒナミが青い産着の赤ん坊、ホアキンを抱きながら元気よく叫ぶ。

 「ああ、お婆さんにホアキン抱かせろってせがまれてたしな♪」

 輪人がヒナミに答える。

 ムーナを倒し、異世界をリントランドと名付けて再スタートさせた輪人達。

 当初はアバターボディで地球への帰還を予定していた彼ら。


 だが、邪魔な敵もいなくなり結婚もした事で我慢を止めた妻達に輪人が襲われ見事輪人と彼女達全員の間に子供が出来た為に予定は中断。

 輪人は、戦隊と神と父親の三足の草鞋を履く事となった。

 

 子供が生まれた事で、子供達に経験値が半分ほど移動してレベルダウンした地球組のメンバーと輪人だけで一時帰還。


 すったもんだの事後処理で、輪人達は異世界移民者となり輪人の実家を大使館として地球とリントランドの交流も始まる事となった。


 そんな面倒事をひと段落させて家族となった輪人達戦隊は、やっとの事で晴間家に帰宅したのであった。


 「案ずるより産むが易し、これからの私達は地球とリントランドを行き来して戦う家族戦隊だよ輪人君♪」

 純子が、私は上手い事を言ったとドヤ顔をする。

 「いや、案ずるより産むが易しはそう言う意味じゃないからね?」

 輪人が純子に軽く突っ込み、実家の玄関を開けた。


 「あ、お帰りなさ~い♪ お義母様達はお出かけです♪」

 すると、シルバーナが銀髪の赤ん坊の輪人との間にできた息子。

 その名も、銀時ぎんときを抱きながらの状態で居間から皆を出迎えた。

 「旦那様、皆様♪ お帰りなさいませ♪」

 ジーラも褐色肌の赤ん坊、輪人との間にできた愛息子の空人そらとをおんぶ紐で背負った風体で出迎える。


 「お帰りなさいあなた♪ シュウ~♪ パパ達が帰って来たわよ~♪」

 玄関前にブラックホールが開き、ケトも緑色の肌の赤ん坊の息子であるシュウを抱っこしながら出現した。

 「あ~っ! 皆、待ってよ~! よっこいしょ♪ お帰りなさ~い♪」

 ケトが出たブラックホールから最後にエレトが出てくる。

 彼女も輪人との間に生まれた息子で白い産着の赤ん坊、モントを抱いている。

 「いや、レベル下がってるだろ皆? まだゲート設置してないのに、力使って無茶するなよ?」

 自分との間に子供達を連れて、自力でゲートを開けて異世界から地球へとやって来た妻でもある仲間達を案ずる輪人。


 「ご心配おかけして申し訳ございません、旦那様♪」

 「シュウがパパを探して大変だったのよ~♪」

 「モントちゃんも同じく~♪ それに私達も地球に来たかったの~♪」

 三者三様に言うジーラ達。


 「まあまあ、家族全員一緒で良いじゃないですか♪」

 何故か桃花がドヤ顔で纏める。


 「そうだな、子供達にも地球の空気とか感じてもらいたいし」

 輪人はこれはもうしょうがないと納得した、全部己の蒔いた種だから。

 「旦那様、私の方でこちらとあちらのゲートは繋げておきました♪」

 ジーラが輪人に告げる。

 「いや、流石に仕事が早いな!」

 「私も、地球を楽しみたかったので仕事は終わらせました♪」

 あっけらかんと答えるジーラ。


 そして、全員集合した戦隊は大取市の観光に繰り出した。

 訪れた場所は、かつての基地であった和風かふぇ夕焼けであった。

 「いらっしゃいませ♪ って、先輩達だっ!」

 「うわ~、噂のハーレム先輩じゃん赤ちゃんもカラフル~♪」

 「……み、蜜柑さん! 先輩達に失礼ですよ!」

 自分達に対応した後輩戦隊達を見て輪人は申し訳なさそうになった。

 「あ~、色々ごめんな? 取り敢えずあんみつセット九人前で」

 「か、かしこまりました! アンミツレッド、桜紅一さくら・こういち! 先輩達の接客、頑張ります!」

 輪人の注文に気を付けをして答える後輩レッドな店員。

 「九人前、いただきました~♪」

 「只今ご用意いたします~~~~!」

 イエローとピンクらしい店員たちも慌しく動き出す。

 「私達ももう、先輩なんだな」

 純子が少し寂しそうな顔になった。

 「仕方のない事とはいえ、時の流れは切ないですわねえ」

 ヴィクトリアもため息を吐く。

 「あ~、何かバイトしてた頃が懐かしいね♪」

 「後輩達も頑張ってますし、地球は安泰ですね♪」

 感慨深く後輩戦隊達を見るヒナミと桃花。

 「頑張って下さいね、アンミツジャーの皆さん♪」

 シルバーナが後輩達を応援する。

 「後輩戦隊とのバトンタッチって奴ね~♪」

 ケトが興味深そうに眺める。

 「子供達が大きくなったらまた連れて来ましょう♪」

 ジーラが輪人に微笑む。

 「本場のあんみつ、楽しみだわ~♪」

 エレトはマイペースであった。


 そして、ユウシャイン達が後輩戦隊であるアンミツジャーが作ったあんみつを見て目を輝かせていた。

 「すげえ、俺達より盛り付けも材料もグレードアップしてる!」

 輪人が、かつて自分達が作っていた物よりもキラキラしたあんみつを見て感激していた。

 「……はむはむ、美味しいです♪」

 食べて見て喜ぶシルバーナ。

 「……む、見事だ!」

 純子があんみつの美味しさに唸る。

 「素晴らしい甘み、地球に来れて良かったです♪」

 ジーラが感動の涙を流した。

 「へっへ~♪ 私達もやるっしょ先輩達♪」

 アンミツイエローこと茶髪ポニテの少女、黄色蜜柑きいろ・みかんがドヤ顔をする。

 「も~~~! 蜜柑さんったら~!」

 お団子頭の女の子、アンミツピンクの桜小豆さくら・あずきがツッコむ。

 「むむ、今度のピンクは可愛い系ですか?」

 桃花が小豆を値踏みする。

 「はい、桃花先輩♪ 我が妹、小豆は世界一可愛い系のピンクです♪」

 真面目そうな少年、紅一が笑顔でサムズアップする。

 「ちょっと、兄さんも止めて下さい~!」

 小豆が紅一に叫ぶ。

 「……戦隊って、個性溢れすぎる面子が選ばれるんだな」

 自分を棚上げして輪人は後輩レッドをみつめた。


 そんな中、店内に輪人達も聞きなれた警報が鳴り響く。

 「クソ、先輩達に小豆の百の可愛さを語りたかったのに!」

 「兄さん、止めて下さい!」

 「小豆、シスコンは無視して行くよ!」

 紅一、蜜柑、小豆が戦闘モードに入って出撃して行った。

 「むむ! これは私達も向かいましょう!」

 「そうだね、先輩の強さを見せつけないと」

 「ドヤ顔されたままは駄目だよね♪」

 「確かに、このままお客様と言うのもつまらないですしね」

 「これはもしや、後輩との共闘って奴ね♪」

 「そうですね、あんみつのお礼に私達も力を振るいましょう♪」

 「あ、お先にお会計するわね~♪ すみません、お勘定~♪」

 「エレトさん、サンキュー♪ それじゃあ勇輝戦隊ユウシャインも出動だ!」

 注文して食べ終えたあんみつの代金を支払い、輪人達も子供達を異空間にある保育ベッドに寝かせてから出撃する。


 「サクランボの甘さ、アンミツレッド!」

 「クリームの甘さ、アンミツブルー!」 

 「蜜柑の甘さ、アンミツイエロー♪」

 「抹茶の甘さ、アンミツグリーン!」

 「あんこの甘さ、アンミツピンク!」

 「「甘味戦隊アンミツジャー!」」

 ブルーとグリーンが先に出撃していた、アンミツジャー達が名乗りを上げる。

 彼らのいる戦場は、市外の採石場。

 敵は新たな悪の組織、宇宙強盗団リャクダッツ。

 「ダ~ッツ、ダッツ♪ アンミツジャー共、このユンボダッツ様が相手ダッツ♪」

 バールのような物を武器にした戦闘員を引き連れた、重機に手足が生えた怪人ユンボダッツが叫ぶ。

 「リャクダッツ、今日は先輩戦隊の皆さんと懇談するんだ五分で片づける!」

 アンミツレッドが叫ぶ。

 「俺達も行くぜ!」

 「え? 先輩達っ!」

 アンミツジャーの後にユウシャインも登場する。

 「炎の主神、ユウシャレッド!」

 ユウシャインは、レッドから名乗りを上げ始める。

 「技芸の風神、ユウシャブルーだヨ~ウ♪」

 次に名乗るのはブルー。

 「海と漁業の神、ユウシャイエローですわ♪」

 アンカーを大上段に掲げて、三番手に名乗るイエロー。

 「悪にお仕置き! 冥界の司法神、ユウシャブラック!」

 ブラックもガベルを振り上げて名乗る。

 「恋も獲物も射止めた女神、ユウシャピンクです!」

 ピンクも弓矢を構えて名乗る。

 「太陽の光明神、ユウシャゴールド♪」

 ゴールドが神々しく名乗った。


 「銀月の女神、ユウシャシルバーです♪」

 仮面の下で可愛らしく微笑み名乗るシルバー。

 「興味深い世界ね、学術神のユウシャグリーンよ♪」

 採石場が珍しいグリーンであった。

 「河馬の女神、ユウシャホワイトよ~♪」

 最後に四股を踏んで名乗るのはホワイト。

 「神のパワーで、未來を拓く! 勇輝戦隊ユウシャイン!」

 ユウシャイン達も名乗りを上げた。

 「馬鹿な、ユウシャインもいるなんて聞いてないダッツ!」

 想像もしていない敵の増援に驚くユンボダッツ。

 「主役は遅れてやって来るってな♪ 先輩力を見せてやる!」

 「なら自分も、後輩パワーをお見せします!」

 刀剣が武器のアンミツレッドと王笏を構えたユウシャレッド、ダブルレッドが背中を合わせて戦いが始まる。

 その結果は、ユウシャインとアンミンツジャーの二大戦隊によるフルボッコのオーバーキルだった。

 「今度は俺達の世界に遊びに来てくれ、アンミツジャー♪」

 「先輩、それはフラグですよ♪」

 ガッチリと握手をするダブルレッド、かくしてユウシャインはアンミツジャーに地球での引継ぎを終えて異世界リントランドへと帰還した。

 

 ふう、地球は相変わらずカオスだったぜ♪」

 ジーラベースの司令室にある自分の椅子に座り込む輪人。

 「うふふ♪ 素敵でしたよ旦那様、空人も喜んでます♪」

 「はい、パパは格好良かったですよ~桃太郎~♪」

 「うん、やはり輪人君は私達の素敵な夫でパパだな♪」

 「私も、ときめいちゃったよ♪」

 「私も、三人目の子供が欲しくなて来ましたわ♪」

 「戦う輪人さん、素敵でした♪」

 「うんうん、格好良かったわ~♪」

 「これはもう、今夜はパーティーよ♪」

 子供達を抱き抱えて、輪人の所に集まって来る仲間達。

 敵を倒し、地球にも帰れたけれど彼らの人生の旅の道中は続くのであった。

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異世界戦隊道中記 ムネミツ @yukinosita

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