心を揺さぶられる愛おしさ。

『情景』から六年。新たな地に飛び立った者や、当別の残った者たちの、それぞれの葛藤を描いた青春群像劇です。

前作から彼らを見守っていると、彼らの置かれた状況に驚くことでしょう。当たり前のように傍にいた友人と離れ離れになっている彼らに寂しさを覚え、直面している困難に嘆くことでしょう。しかし彼らの絆は眩しいほどに固く温かです。私は友達を思う彼らの気持ちに、心を大きく揺さぶられました。迷いながらも真っ直ぐに前を向こうとする彼らが、堪らなく愛おしく感じます。

文章は視点に揺らぎなく安定していて非常に読みやすく、容易にその視点の人物に共感させてくれます。心情を反映した情景描写が巧みで美しく、物語に安心して浸ることができます。加えてストーリーも面白く、複数人それぞれのパートを平行させ、それを交わらせていく構成には舌を巻きました。

哀しみの中にも愛おしさがあり、弱さは友の助力を得て力強さへ昇華していきます。
ぜひ、彼らの歩みを見守ってみてください。

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