「あの娘が空を見上げる理由ー憧憬ー」から六年後のお話で、今作は北海道と京都が舞台です。
前作を読まれている方には少し違った雰囲気と衝撃を受ける展開が待っているかと思いますが、それでも作者さんの丁寧で優しく穏やかな文章と人々の生き生きとした姿や豊かな風景描写は変わらずにあって、ますますお話にのめり込んでしまいます。
それぞれの人達がちゃんとそこで息をして生活をしているのが感じられるほどリアルに描かれているのが本当に凄いですし、彼らの選択や生き方を知っていくうちに、とても優しい気持ちになれるお話だと思います。
ぜひシリーズを通して読んで欲しい、とても素敵なお話です!
『情景』から六年。新たな地に飛び立った者や、当別の残った者たちの、それぞれの葛藤を描いた青春群像劇です。
前作から彼らを見守っていると、彼らの置かれた状況に驚くことでしょう。当たり前のように傍にいた友人と離れ離れになっている彼らに寂しさを覚え、直面している困難に嘆くことでしょう。しかし彼らの絆は眩しいほどに固く温かです。私は友達を思う彼らの気持ちに、心を大きく揺さぶられました。迷いながらも真っ直ぐに前を向こうとする彼らが、堪らなく愛おしく感じます。
文章は視点に揺らぎなく安定していて非常に読みやすく、容易にその視点の人物に共感させてくれます。心情を反映した情景描写が巧みで美しく、物語に安心して浸ることができます。加えてストーリーも面白く、複数人それぞれのパートを平行させ、それを交わらせていく構成には舌を巻きました。
哀しみの中にも愛おしさがあり、弱さは友の助力を得て力強さへ昇華していきます。
ぜひ、彼らの歩みを見守ってみてください。
北海道と京都を舞台に繰り広げられる、リアルな人間ドラマです。
ストーリーの詳細は他のレビュワー様が触れて下さっているので割愛しますが、様々な葛藤を抱えた人々の心が交錯し、一つの大きな物語を導きます。
完璧な人間なんて、きっと存在しません。
人間は一人では生きていけないし、一人で生きているつもりでも、やっぱり誰かの助けを借りているのだなぁ、と考えさせられました。
登場人物の心や背景がしっかりと作り込まれていているのでリアリティがあり、まるで、たくさんの友人の日常を見守っているかのようか気分になります。
なお、こちらの作品はメイン登場人物たちが高校生だった「憧憬」の続編ですが、「結」単体でもお楽しみいただけるはずです。
大人になってから出会った友人とも心を通わせる事ができるのと同じですね。
ですがやはり、「結」を気に入って下さった方にはぜひ「憧憬」もお読みいただきたいです。登場人物達の過去を知ることで、より一層、感情移入できるはずですよ!
ぜひご一読ください。
物語については、ほかの皆さんが説明してくださっているので省きますが、登場人物の個性の豊かさと、それぞれの性格が深く描かれる様子に圧倒されます。
前作では高校生だった主人公の美葉と幼馴染みの仲間たちが大人になりゆく中での迷いや人間関係のもつれにはらはらし、そして友のために行動を起こす様に心動かされます。特に人の持つ悪い面、重い側面がリアルに書かれていて、自分がその場にいるかのように緊張するほどでした。
このままシリーズでドラマ化して欲しいです。
北海道の自然と京都の伝統が合わさって、映像化されたらとても美しい作品になると思います。そして多分、北海道に移住したい!と思う人が続出すると思います。
ドラマ化された暁には、美葉ちゃんを宮崎あおいさんに演じて欲しい……。
テレビ関係の人、ぜひ読んでください!
本作は北海道の大地で育ち、出会った人々が、それぞれの生き方に向き合う物語です。
故郷を離れた都会で仕事に忙殺されてしまう美葉、才能あふれる家具職人でありながら工房の運営を行き詰まらせてしまう正人、看護師として懸命なあまり自分が見えなくなってしまう佳音、友人たちになにも告げず行方をくらませてしまう錬、そして故郷の町に住むみんなに慕われていた節子ばあちゃんの変化……人生には多くの節目があるけれど、そこでハッピーエンドなわけではなく、生きていく中で喜びも苦しみも繰り返すもの。
愛おしくも、少しだけ欠けたところのある多彩な登場人物たちが、胸に響くドラマを観せてくれます。
本作の前の物語もありますが、こちらから読み始めても問題ありません。
ええ、私もそうですから。
いよいよ終盤に向けて佳境に入る展開、最後まで見届けてから、彼らの若い頃のお話ものぞかせてもらおうと思っています。
落としてしまったもの、見ないふりをしたもの、信じたかったもの、忘れかけていたもの。
変わらないはずのない時間の流れに、不意に気がついてしまった瞬間。
静かな筆致で切り取られた鮮やかな場面場面に、きっとあなたも、誰かと手をつなぎたくなることでしょう。