手をつないでいたい。家族と、友達と、そして大切なあなたと。

 本作は北海道の大地で育ち、出会った人々が、それぞれの生き方に向き合う物語です。

 故郷を離れた都会で仕事に忙殺されてしまう美葉、才能あふれる家具職人でありながら工房の運営を行き詰まらせてしまう正人、看護師として懸命なあまり自分が見えなくなってしまう佳音、友人たちになにも告げず行方をくらませてしまう錬、そして故郷の町に住むみんなに慕われていた節子ばあちゃんの変化……人生には多くの節目があるけれど、そこでハッピーエンドなわけではなく、生きていく中で喜びも苦しみも繰り返すもの。
 愛おしくも、少しだけ欠けたところのある多彩な登場人物たちが、胸に響くドラマを観せてくれます。

 本作の前の物語もありますが、こちらから読み始めても問題ありません。
 ええ、私もそうですから。
 いよいよ終盤に向けて佳境に入る展開、最後まで見届けてから、彼らの若い頃のお話ものぞかせてもらおうと思っています。

 落としてしまったもの、見ないふりをしたもの、信じたかったもの、忘れかけていたもの。
 変わらないはずのない時間の流れに、不意に気がついてしまった瞬間。
 静かな筆致で切り取られた鮮やかな場面場面に、きっとあなたも、誰かと手をつなぎたくなることでしょう。

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