ミステリー・ショット
「ジョニー!」
グウィンは空弾倉を捨て、左内股から抜いたロングマガジンを装填しつつ左手を、ジョニーの首にあてた。しかし、片手では足らない。指の隙間から、手と首の間から、とめどなく血が噴き出す。
グウィンは銃をテーブルに置き、右手も被せた。
足らない。
絶望的に足らない。
硝煙で濁る室内が、赤く染まっていく。
床に伏していたアイクが小さく
グウィンは顔を歪め、真っ赤に濡れた右手を後ろに伸ばした。
「〈ホブ〉メロウ」
ゼル爺が呟き、銃声が轟く。
グウィンが、床に倒れた。
「……クソ、が……!」
クレイが壁伝いに立ち上がった。胸に穴が増えている。跳弾を食ったか。
ゼル爺はグロッグを拾い、カフのレバーを下げた。
「……てめえ。てめえら」
クレイが血を吐いた。
「すまんな」
ゼル爺がレバーを上げた。
「よせ、グウィン!」
炸裂音が激しく鳴り渡った。
壁擦れの音とともに、人が倒れた。
ため息。
「……ランキングはやり直しだな」
重い銃声が響いた。
カフが下げられ、音楽が流れ始めた。
*
「――以上、殺し屋ぁ、ランキングゥ! でした!」
ラジオから声が聞こえてくる。
「いやあ、終わりましたね。あの惨劇を乗り越え、またランキング? ラジオ? 本当に? そんな気分でしたが、なんとか――な、ん、と、か! 終了! 去年の反省を踏まえて一人ではありましたが、どうでした? あなたのお名前、ありました?」
数秒の間を置き、言った。
「まー、あったにしろ、ないにしろ、皆さま、来年も頑張りましょう! ということでー……残りの時間は、あの事件のあと引退されましたゼル爺による、暖炉と毛鉤とジジイの小話……? のコーナー? だそうでーす。……何やるんだろ? まぁいいか! ではでは! また来年!」
一拍の間があった。靴音。ノイズ。
「――まったく、やれやれだよ。何をやらされるかと思えば、誰がこんなの聞くんだ? ……まあいいか。最近、趣味でフライフィッシングを始めてな。まだ腕はヘボだが、毛鉤を作るのが楽しいんだよ。そこで、この時間は、ウチの暖炉と、俺が毛鉤を作る音を聞いてもらおうと思う。あと一つサプライズが――」
ノック。
「おっと。来たらしい。あんなことがあったから、思い出してね。ゲストを呼んだんだ。紹介しよう、親友の孫の、ホッブス――」
「やあ、ゼル爺」
「……なんてこった。本物が来やがった」
銃声。靴音。
後には、薪の爆ぜる音だけが残った。
――だが、耳を澄ませば、毛鉤を巻く音がする。
ネトラジ! 殺し屋ランキング! λμ @ramdomyu
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