史上最悪の放送事故
ジョニーはSIGのグリップを指先で叩き、マイクに顔を寄せた。
「ちょっとピリっとした空気も生でお届け! 殺し屋ーーーラジオ!」
バカみたいな大声に、部屋の空気が弛緩した。
「お歳のせいかおゼル爺は
この日一番盛大なコーナージングルが流れた。
「まずは本題、終わらせてぇ……雑談タイムだ! ってわけで……まいります」
神妙に言い、ジョニーはSIGを握る手でタブレットに触れた。
「いやしかし今年の殺し屋ランキングゥ! 前年からもう、そりゃあもう、大変にもう、おっとろしいくらいの変動がございます! 何しろ皆さまご承知の通り一位を独占していた〈ホブ〉メロウが引退! しかも一月前までの三位と七位がランク外の刺客の手により死亡! さらにさーらーにー、そいつを始末したのはまたまた今現在ランク外におわすゼル爺さん! というわけで! まずは事情聴取だ! ゼル爺!」
ジョニーは尋ねた。
「どうでしょう。今回の功績――報酬はなくても、トップテン入りもあるんじゃ?」
「ハッハ」
ゼル爺は鼻で笑った。
「ないよ。俺は今でも
「――おっと?」
ジョニーは
アイクが水差しを取り、グラスに水を注いだ。
「〈ホブ〉メロウ?」
グウィンが目を細めた。
「あなた左利きじゃなかった?」
「――しまった」
誰が言ったか。ジョニーが振り向く。アイクはテーブルでグラスを叩き割った。左手でSIGの銃口を逸らす。発砲。流れ弾がビール瓶を貫きクレイの左肩に命中、椅子ごと倒す。
アイクは割れたグラスの底を逆手に持ち替え、ジョニーの左眼窩に突き立てた。絶叫。アイクは続けざまに後ろ頭を掴んでテーブルに打ちつける。砕けたガラスの欠片を拾って指に挟み、首に沿わせた――が。
「〈ホブ〉メロウ!」
グウィンが椅子を蹴倒し、太ももから拳銃――分間千二百発を吐き出すグロッグ18Cを抜いた。暴れ馬を思わせる連射は、しかし、女の手には余った。
そのときだった。
「ズドン」
ゼル爺が呟き、重い銃声が響いた。
アイクの躰が吹っ飛び、壁にぶつかり、膝から崩れた。
ジョニーの顔がのろのろと上向き、
「――コッ、プッ」
首筋に浮いた赤い線が、噴水のように血を
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