デッドマン・スピーキング

「身内でばっかり盛り上がってて申し訳ない! ――って、そもそもこのラジオが身内か!」

 

 ハハ、と笑ってジョニーがブランデーを注ぎ足した。


「というわけで、どうせ聞き手も身内なんだし、ラジオっぽいことやってみよう!」


 ジョニーは部屋の面々を見回した。誰もが訝しげに肩を竦める。


「リスナーからのコメントコーナー!」


 部屋に陽気なコーナージングルが流れ、タブレットが持ち込まれた。


「映像ナシなんでアレですが、まあ色々と面白いコメントが来てますね。やっぱりというかなんというか、〈ホブ〉メロウさんへの質問が多くて――おっと? これいいですねえ。『メロウは去年死んだ』! いや、じゃあここにいるのだーれー!?」


 アイクは苦笑で応じる。


「引退したら死人も同じですけどね」

「ハハハ! たしかに! 死人に口無しどころか最近の死体は饒舌になったもんで……オゥ、また続々と『そいつ本物か?』って」

「これ、僕もしかして挑発されてます?」

「うわ怖! みなさーん? あの〈ホブ〉メロウが怒ってますよー? 明日からノックの音には気をつけてくださいよー?」


 ポン、と音を立ててビール瓶から口を離し、クレイが言った。


「あと月のない夜にもな。月並みだけどよ!」


 クレイだけがバカ笑いしだした。酔っているのかもしれない。

 ゼル爺が左手を小さく挙げた。


「せっかくだ、ジョニー。俺も昔話をしたんだし、君もしてくれないか」

「おお!? いいですよぉ、なんでも話しちゃいましょう。ブランデーが私の下の潤滑剤! なんて言ってみたりして!」

「うん。そのスプリング殺人の話なんだがね」

「えぇ~!?」


 ジョニーは大げさに驚いた。


「いやあ、苦労はしましたけど、仕事としちゃ面白いもんじゃなくって、語るほどでもないんですよ、アレは」

「そうはいかない」


 ゼル爺が冷えた声で言うと、ジョニーも声を低めた。


「何が聞きたいんです?」

「年寄りを脅して何になる。殺す前に、相手のことを調べたか聞きたいだけだ」

「仕事に必要な分は。なんでです?」

「あれは、俺の親友の、孫でね」


 ゼル爺が言い切るかどうか。ジョニーが拳銃を抜いて机に置いた。SIG P320の短銃身だ。


「それが何か?」

「いや、たった一人の兄貴の死に様を笑い者にされて、遺族はどう思ってるか――」

「許せねぇ! じゃね? 月並みだけどよ」

 

 クレイだけが笑った。

 ゼル爺は鼻で息をついた。


「飲みすぎたな。酔う前に本題に入ろう、ジョニー」

「本題?」

「総合ランキングだよ」

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