XIII-2010年7月
◆
これは、あたしが一番幸せだった頃の記憶。
そして、これはあたしが墓場まで持っていく秘密。
あれからすーちゃんとは疎遠になった。大学へ行って、すーちゃんとは学部がバラバラになって、あたしはあたしが抱いた感情の引け目からすーちゃんを遠ざけるようになった。あたしの紹介ですーちゃんにも友達ができて、あたしとすーちゃんはお互いに唯一無二じゃなくなった。サークルも一緒にはならなかった。すーちゃんはボランティアサークルに、あたしはDTM研究会に入ったのだ。すーちゃんの方からもなぜか避けられているような気がして、あたしたちは大学卒業を機に連絡すら取り合わなくなった。
それでもすーちゃんは──天津燈子は、あたしの燈だ。今でもそうだ。この燈の差す方へ進めば絶対に間違えない、今でもそんな気がしている。
すーちゃん、お元気ですか。
あたしは元気です。
最近暑いね。もう七月だって──あの頃滅びる予定だった世界は、あれから十一年も生き長らえています。
もうあたしが知ってるケー番でもメアドでもないんだろうけど、いつかきっとまた会えるよね。
あたしの、あたしだけの唯一の燈。いま何をしているのかな。
あの子が幸せでありますように。
1999年 木染維月 @tomoneko
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