人は選んじゃうけど

一見普通に見えてしまうぐらい理路整然としていて、普段は冷静だけど、スイッチが入ると本質が見える鬼才タイプの狂人から得られる栄養が大変よく効く体質なので、こういうタイプの主人公、大好きです!やったー!おかわりー!!
……しまった、いきなり本音が本音の熱量のまま出てしまった。

とりあえず、「主人公には感情移入したい!」派の人で、なおかつ「正統派ヒーローの主人公」を望む方で、このお話を受け付けられる方は少ない気がします。
はっきり言えば、この主人公、己の欲望に忠実で、その欲望以外は「どうでもいい」からこそ、それなりに普通に振る舞えてしまう(それでも目立つ部分は他者から叩き込まれたからしてるだけ)、逆に言えば、己の欲望の範囲となれば外道なこともするだろう、執着と鬼才の同居した狂人なのですから。

いや、今のとこ(2022/4/10 4章完時点)流石に外道ムーブはしてな……いよね? 皆さんの外道判定、如何なんでしょう、ね……? ああでも、空白の年月があるからなあ……そこでは完全にやらかしてそう……でないとあの人が、うーん……

そんな疑惑の判定、過去の出来事は開示待ちな状態なので、「清廉潔白、感情移入可能な正統派ヒーローとしての主人公像」をお求めの方には絶対向かないタイプなのですが、私には非常に向いてました、ええ本音の通りに。
この栄養、とれる時にとらねばなかなか見つけるのがむつかしいので、大変助かります。

この物語において、魔術が枠を超えてでも願いを叶える術であるならば、それを他者にそそのかす彼は、他者にはアラジンにおけるランプに住まうそれと同じに、願いを叶える『魔神』として映るのでしょう。ああ、でも、彼には少なくともランプという物理拘束じみた制約はないのだわ……この鬼才、トリックスターかな?

そんな自由を手にした己を台風とは自覚していない巨大台風の目が、ただ欲望のままに、欲望以外は流されるままに動いた軌跡に、果たして何が残される、あるいはすでに残されているのか……大変楽しみにしております。じゅるり。

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