第5話
「こら鬼助、人の脳漿がこぼれてるよ。もっとゆっくり丁寧に食べなさい」
鬼助は人を逆さにして必死になって尻の肉をこそいで食べている。少しひびの入った頭から漏れ出した脳漿で服を汚すのはまだいいが、床やカーペットを臭いのあるもので汚されるのはしんどい。
人鍋はとてもおいしいけれど、食べ終わった後の人の細かい骨や飛び散る体液などでテーブル周辺がひどく汚れてしまうことがネックなのだ。特に幼い子がいるとさらに汚れ具合はひどくなる。
できるだけ食事中の汚れを最小限に留めるためには子供から目を離さないようにしなければならなかった。鍋の番をし、子から目を離すことなく自分の食事もするということは最早曲芸である。
そんな曲芸も子が育つにつれて最近はかなりの上級者レベルになってきたような気がする。何の自慢にもならないが、自分の苦労を少なくするための手段として日常に生きている気はする。
鬼の食卓 千秋静 @chiaki-s
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