小説という表現形式は、孤独な魂の行く末を数多く描いてきました。ハッピーエンドもバッドエンドも、現実には見られない結末までを数多く描いてきました。
本作は、その歴史に連なる一作です。そして過去の作品群に引けを取りません。
あなたは孤独ですか? この問いに「いいえ」と答えるか「はい」と答えるかで、本作への印象は変わるでしょう。
「いいえ」と答える人は、良くできたフィクションとして楽しむでしょう。いい話だった、と。
「はい」と答える人は、我が身を振り返るのではないでしょうか。それが無自覚な厨二病なのか、現実に孤独なのか、そこには関係なく、我が身と本作の主人公を見比べるでしょう。自分はどれほど孤独なのか、と。
そして「はい」と答える人は激しい感情を抱くでしょう。それがどういう形であれ。
本作は、孤独な魂に捧げられた、孤独な魂の物語です。
安易に「感動する恋愛もの」だとか、「尊い百合もの」だとか、そんな言葉で括ってしまいたくはない。
この作品は、この世界で生き辛さを感じる人たちを全肯定してくれる。すべてのマイノリティの救いとなる物語だと思った。
ただその救いを得るのも容易ではない。最後に渡される選択肢に、迷わず頷ける人は少ないだろうと思うからだ。最後まで自分を貫き通さざるを得ない不器用さがなければ、本当の救いを得ることはできない。
ちなみにこの作品、タイトルにもエピタイにもどこにも嘘がない。それを確かめるだけでもこの作品を読みに行く理由になるのではないかと思う。
安っぽい当たり前の言葉で閉じてしまいたくはないけれど、これだけは言わせてほしい。
素晴らしかった、と。