探偵事務所に就職したけれど、推理小説で起こる事件などそう起きるはずもなく、日々所内の事務や雑用を担当していた筆者のゴオルド氏。しかし、そんな探偵事務所をある凶悪な犯罪が襲う! それはなんと詐欺事件…………で事務所の社長が捕まったのだ!
そう本作は探偵事務所で働いていたのに捜査する側ではなく捜査される側になってしまった人の体験談なのである!
突然来訪する刑事、いつの間にか姿を消す他の従業員、一切連絡が取れなくなる社長……これだけでも大変なのに、社長の冤罪の可能性を信じて事務所に残ってしまったゴオルド氏を待ち受けるのは、溜まりに溜まった仕事の後始末……!
置かれている状況はかなり深刻なはずなのですが、決して腐らずにそのことをコミカルに書いているのが大きな特徴。ゴオルド氏をこんな目に追い込んだ社長ですら、どこか愉快な人物として描かれます。
事件を通じて厄介ごとに次々巻き込まれていくゴオルド氏の体験談は読み物としても大変面白いのですが、それと同時にあなたが犯罪に巻き込まれた時のヒントになるかもしれません……。
(「騙し騙され詐欺の世界!」4選/文=柿崎憲)
当時の作者さんは二十代。すでに何度か転職しており、三社目に「探偵事務所」に入社します。そしてそれが事件の始まりなのですが。(探偵事務所だけに……)
「探偵事務所」に入社してから一年後、作者さんの携帯電話に警察と名乗る中年の男性から電話がかかってきます。
最初は偽物ではないかと思いますが、探偵事務所の事情にあまりにも詳しいということもあり、作者さんは警察官と会って話をすることになるのです。
そして、警察官から切り出されたのは、「おたくの社長が詐欺しているんです」という話でした。何となく納得してしまう作者さん。そして「この話は社長にはいわないで……」と警察官に言われるのですが、作者さん正義感の強い方で、社長に自首するように言ってしまうのです。
さてさて、これからどうなってしまうのでしょうか。
この後、思いも寄らないことが次々と起きて、作者さんは部外者で被害者なのに、この事件のせいで色んな後片付けをさせられることになるのです。
しかしテンポがよく鋭いツッコミがあるので、大変な話なのについ笑って読んでしまいます。
気になった方は読んでみてはいかがでしょうか。
これって、フィクションだよね。どうかフィクションであって欲しい。
でも、どうやら、マジでこんな大迷惑を被ったらしいんです、この文章を綴った作者様は。
私達が世界を眺める時、自分が平和に生きていて、明るくて朗らかな世界ばかりを見ようとしていたなら、世界の暗部というのは中々見えにくいものですよね。
でも、キレイゴトってヤツに唾を吐いて泥の付いた靴で蹴り上げるようなヤカラってのは、世界に山盛りいるようでございます。
作者様は降って湧いたような災難に巻き込まれて、社会の暗部をまざまざと見せつけられます。それがとても軽いタッチで描かれていてとても面白い。
この作品に描かれているようなケースに巻き込まれる事はそうそうあるとは思えませんが、似たようなケースに陥る事が決してないなんて事は全ての人に言えない訳で。なので、転ばぬ先の杖的な学習としてこの作品を読む事もオススメです。
あ、あと、作者様の現在の幸せを遠くから祈っておきます。
ゴオルドさんのエッセイ、どれも面白いので、いっつも楽しみに読んでます。
しかも今回は社長が逮捕されるというパワーワードをぶち込んできました。社長が逮捕され、周りの社員はトンズラし、一人事後処理をするゴオルドさん。
「え! そんなことが!」
と思える内容盛りだくさんでした。特に頭のネジが何本も抜け落ちたような社長および社長の恋人の言動には笑い過ぎて腹がよじれるかと思うぐらいでした。物理的に。
エッセイの一つの醍醐味が「その人しか体験できない世界を知れる」ってことだと思うんです。
そのエッセイの醍醐味が凝縮した、闇深く、ぶっとんだゴオルドワールド全開で、おすすめのエッセイです。