第三章・魔蟲争乱編
第117話 見習い勇者のとある朝
「サンサラ先生、おはようございま………って、また本ばっかり散らかして…。ほらっ、ご飯冷めますから、起きてください」
ガチャッ、と涼やかなノースリーブにハーフパンツ姿の上からエプロンを掛けた朝霧が扉を開けた先にはベッドの周りにごちゃっ、と詰み散らかされた分厚い本が見える
汚い、というよりベッドの周りだけがとっ散らかっており、そんな本の山の中心に小山のように膨れたブランケットがもぞもぞと動き出す
足元にとっ散らかった分厚い本をひょいひょい、と飛び越えてそんなベッドの横に立った朝霧はなんの容赦も無くブランケットを剥ぎ取り、中で陽光に目を閉じる彼女……サンサラに溜息をついた
「ほら、もう朝ですよ。というかご飯が冷めます、早く来てください」
「……昼ご飯に起こして…サギリ……。もうちょっとだけ寝……」
「早く起きないとご飯より先に先生を冷まします」
「おはよう、サギリ。いい朝ね、サギリのご飯は美味しいもの、直ぐに行くわ」
一瞬で姿勢良く滑らかな動作で体を起こしたサンサラは先程までの夢うつつな様子はどこへやら。まるで1時間前には既に起きていたかのような自然な動きでベッドから降りる
サンサラは知っているのだ……この弟子は、やると言ったらやる女であることを…。というか体験済みであった。この魔道具による空調が効いた涼しい部屋の中で既に2回も怠惰な寝起きをひえっひえに冷却された事があるのだった
ここはサンサラが開けている魔法屋『メールウィ魔法本店』と繋がって裏手に建てられているサンサラの自宅である
ラヴァン王国の一等地に建てられた自宅兼お店であるこの場所は巨大な邸宅と言える程ではないが贅沢には十分な規模の自宅であり、現在は3部屋を朝霧、耀、ルルエラの3人が居候の形で部屋を貸し出されている状態となっている
サンサラとしても勇者ジンドーから託された3人を蔑ろに扱わない気があるからこそ、自宅に住むことを許しているが…もう一つの理由は注意と監視の為である
少なくとも、レルジェ教国である程度の時間を過ごしているのは警戒に値する…特に、かの国の聖女であるルルエラは要注意なのだ
パーティ仲間のザッカーも頻繁に出入りする…サンサラも2人入れば万が一はあり得ない
おかしなことをしないよう注意を払っていたのだが…
「……美味しいわね、ほんと。こんなにするする胃に入る朝ご飯なんて、私初めてよ」
「やっぱり朝ご飯は和食に限るわね…こっちの世界にもお米があってほんっっとに助かったわ。流石に味噌は無かったけれど…」
「昔の勇者が創り出した穀物ね。豊穣の勇者イツカマホが植物を自在に操作、生み出し成長させる特異魔法『
「植物を操作する……凄い魔法だね。考えただけでも使い方は何通りもある…系統は地属性なのかな」
「イツカマホも凄い有名な勇者だよ!確か当時の食糧事情を3年で3400%も向上させて餓死者がほぼ消えたんだって」
「「さ、3400%…………」」
今では毎日、こんな風に朝は全員で食卓を囲んでいたりする
用意しているのは朝霧だ。和食が大の得意であった彼女は市場で日本のものと全く同じ米を見付けて大はしゃぎしていた。サンサラの直弟子となった朝霧が居候のお礼も兼ねて作れる時は作っていたが、これが意外にもサンサラに大好評だった
ラヴァン王国を含め、この世界の朝ご飯はかなりガッツリめだ
普通に肉やらパンやらがどかん、と机の上に乗るようなスタイルで、朝に弱くそのスタイルが嫌いなサンサラは朝食抜きが基本だったのだが…
炊いた白米、塩気のある卵焼き、川魚の塩焼き、キノコや野菜を濃いめのスープで煮て引き上げたおひたし風、味噌汁代わりの魚と乾燥キノコで出汁をとった優しいスープ
かなり和食に寄せて作られた朝ご飯はサンサラでも、もりもりと食べられる…そんな事もあって、朝食がある時は朝霧が彼女を起こすようになっていた
そんな食卓の主役の1つ、米がこの世界に登場したのは遡る事227年前のこと
時の勇者、イツカマホが操る特異魔法『
これにより、最初に作られたのが日本でお馴染みの米であった
水田があれば農作が可能であり、干魃や気候等の問題はラヴァン王国であれば安定しており障害にはならなかった事に加え、この世界では魔法の存在により水不足等は即時解決が可能だったことも相まって一気に広まったのである
現在は最初にイツカマホが米を生み出した街、ラヴァン王国の南に構える巨大都市でありラヴァン四大都市の一角でもあるレザーゴントがほぼ全ての生産を担っている
彼女が召喚され、魔物の侵攻による食糧難は一挙に解決された
当時の食料普及率は驚異の34倍に膨れ上がり、当然のように出ていた餓死者はぴたり、と現れなくななったのだ
勇者の中でも特に有名人の1人が、イツカマホと言われているのはこの為である
そんな桁違いの数字をルルエラから聞かされて顔を引き攣らせる耀と朝霧…本当に自分達は同じ場所から来た異世界人なのか?と疑うばかりの情報である
そんな心情を見越してか、サンサラは「その辺は気にしない方がいいわ」と言葉を入れた
「はっきり言って、サギリもヨウも私から見たって異常なの。平均的な魔法使いの魔力量が爪先くらいにしか見えない魔力を持ってるし、持ってる魔法もセンスも特級品よ?羨ましがると後ろから刺されちゃうかもしれないわね」
「そうなんですか?…僕達以外の人の魔力って、そう言えば殆ど見たことなかったかも。僕の魔力が今……33万くらいだね」
「…なんだか気になる事を平然と言ったわね、ヨウ。あなた、魔力量が数字で見えてるの?」
「え?……こ、こういうものじゃないんですか?僕はてっきり、鑑定だとこう見えるのかと…」
「あり得ないわ。恐らく……無理矢理数値に表しているのかしら…?ヨウ自身が把握出来るようにする為に無意識的に数値に例えて表示されてるのかも…」
耀の言葉にサンサラが疑問符を付けた
普通、魔力やステータスに数字など付かない。ゲームの世界でも無いのだ、パラメータのような物はあるはずが無いのだが耀の鑑定には最初から魔力量が数字になって記されていた
サンサラの考察は当たる…それは魔力なんてものに馴染みがない耀が、自分で分かりやすいような形で表示されてるというもの。ゲーマーであった耀はこの手のステータスを数字のパラメータで考える癖があった…そこから、強引に数値化で例えて鑑定に表示されていたのだった
「耀、今の私はどれくらい?」
「朝霧さんは……35万だね。レルジェ教国に居た時よりかなり伸びてるよ」
「ま、勇者の成長率はこんなものよ。そう……成る程……そのくらいの魔力で数字にすると33万くらいなのね。ちなみに国に仕えるトップクラスの魔法使い…宮廷魔法師の魔力量はその換算で行くと……そうね、20万くらいになるのかしら?」
「以外だわ……もっと高いと思ったけれど、宮廷魔法師って。今の私と殆ど同じなのね」
「ちなみにその計算でいけば、一般人なら多くても500よ?」
「500だけですかっ?なら僕や朝霧…ルルエラだって相当魔力があるんじゃ…」
「そうねぇ。例えば、才能あるあなた達の同年代なら………1万くらいかしら?才気溢れる、って言われてるこの国の王太子の魔力がだいたい7万くらいね。本当なら年月を掛けて培っていくものなの。おめでとう3人とも…それに比べれば、もれなくあなた達はバケモノみたいなものよ」
「ぼ、ボクもなのかな、それ…。なんだか自覚全然わかないんだけど…あっ、じゃあさ!勇者パーティってどのくらいなのかなっ?」
自分達の保有する魔力だけでも常人どころか一線級の魔法使いを上回る物を持っている事実にちょっと現実味の沸かない3人だが、ルルエラはちょっと気になってしまった
人類の中でも最高峰の者達は、一体どのくらいのものなのか
レルジェ教国の中でも特に優れた魔法の操り手…実は2人に比例してルルエラもまた、さらに成長を遂げていた。旅の実践的な魔法使用とサンサラからの手解きを貪欲に受け、その実力を引き伸ばしている。放つ魔法はさらに素早く、正確に。判断は素早く、特異魔法による短距離転移の判断を磨き…その魔力量は現在でも25万にまで上る
しかし、まだまだ上がある…その頂が気になったのだ
「私達?そうねぇ………ザッカーなんて1番魔力が少ないわよ?数字でいくと……880万くらいかしらね。まぁ、放出が出来る魔力が少ないから」
「「「はっぴゃくはちじゅうまんっ!?」」」
3人の顎が落ちた
上にも程があった
というか、それで一番少ないのか…そう思わずにいられない程に比べ物にならなかった
文字通り桁が違った
普段から飄々とした態度で、稽古をつける時も基本的に強化魔法のコツや体術、短剣術をみっちり教えてくれる姿しか見たことがなかったこともあり、とても魔力を多く持つ印象がない
なんなら強化魔法以外の魔法を使用している姿を見たことがなく、にわかには信じられないのだ
だが、ここで耀は好奇心が湧き出す…ならば目の前にいる朝霧へ魔法の指南をしている正真正銘の魔女は一体どれ程の者なのか
(失礼します、サンサラさん……
特異魔法…
自分達は、彼女がどういう存在なのかを知らない…あの漆黒の鎧の勇者と共に旅をした仲間という事しか、情報が無かった
そのサンサラは…
「なにそれぇっ!?」
思わず素っ頓狂な声が飛び出した
隣で朝霧とルルエラが普段は声を荒立てない耀が驚きの声を上げたのにぎょっ、としている
それ程までに衝撃的な数字だった。最早桁数が多すぎて何度見したか…そりゃザッカーが一番少ないと言われる訳である。勇者一行の魔女サンサラ、その魔力量は勇者を除き、次点のラウラを超えて最大値を誇る
「あら、やっと確認したの?…というか、私の鑑定妨害を簡単にすり抜けて情報を読み取れるあたり、流石は異世界人と言うべきねぇ…ちょっと、プライドが傷付きそうよ?」
悪戯な笑みを浮かべたサンサラ、その言葉に2人は耀が彼女を調べたのだとようやく理解する
「き、聞くのが怖いよ……ど、どうだった、ヨウ…?」
「正直、ザッカーさんの800万でお腹いっぱいだけれど…一応聞きましょ」
「えっと……僕の魔力の100倍くらい…かな」
「………ひゃくばい?」
「えっ…………………」
「「……………さんぜんまんっ!?」」
『〘名前〙サンサラ・メールウィ
〘二つ名〙
〘保有魔法〙
〘年齢〙477
〘魔力量〙32031500(数値化による誤差あり)』
耀の目にはこのように表示されていた
「だいたいそのくらいかしらね。これでも旅の最中に色々と頑張って引き伸ばしてはいたのよ?まぁ魔力量が全てではないから、安心なさい」
朝食を進める手が完全に停止する…もはや別の生き物にしか見えない。朝霧も耀も、ここでサンサラとザッカーに鍛えられるまでは魔力量切れなど経験したことがなかった。…というよりも、使えきれない程度に魔力があったのだ
正確には、使い切れる魔法をまだ持ってないのだが…
それでも、強大な魔力…世間的には超常的な力に分類されるもののはずなのだが、何故だろう………自分達がとてもちんまりした物に感じてしまう
「わ、私達って本当に勇者として呼ばれたのかしら……?現地人の力が強すぎて絶対に必要なかったと思うのだけど…」
「奇遇だね…僕もそう思えてきたよ。これ、レルジェ教国で自信満々に「勇者」なんて名乗ってたらどうなってたか…考えたくも無いね…」
「ぼ、ボクも一応あの国で一番の聖女だったと思うんだけど……もしかして大したこと無かったかな…?」
ちょっとした羞恥心が3人を襲う!
方や「勇者」などと呼ばれて特別待遇を受け、方や国の「聖女」の頂点と扱われて特別待遇を受け……なのに、自分は実は全然特別さとか無いのでは?という恥ずかしさが…!
自分の力と世間一般の強さのレベルを勘違いしてイキる恥ずかしい奴だったのではないか!?
そんな心中を察してか、サンサラが可笑しそうに笑いながらその提案を差し出した
その提案は奇しくも……黒鉄の勇者が慕う少女達にした物と全く同じものなのであった
「じゃあ、その辺の常識とか諸々を勉強する為に……3人とも、学校に行かないかしら?」
ーー
「学校って…こっちで行くことになるとは思わなかったわね。これ、高校って事になるのかしら…」
「ヒュークフォーク王立魔法学院と言えば、世に名だたる名学校だよ!アルスガルド四大学校にも数えられる凄い所なんだ!いやぁ、ボクも学校行ってみたいと思ってたから嬉しいなぁ!」
「名門……って、しかも「王立」となると結構凄い所だよね。こっちで言う「国立」みたいな…。それってさ、貴族とかもいるのかな?」
「居るよ、というかめっちゃ居るよ!ヒュークフォーク王立魔法学院は貴族の中でも特別級のステータスなんだよ!確か今だと王太子も通ってる筈だし、ヨウとサギリとは同じ歳だった筈だよ?」
「…ねぇ、気の所為かしら…テンプレならかなり面倒臭い香りがするのだけど…特に「貴族」とか…「王太子」とか…」
「舞台的にはあれだね……ファンタジー系少女漫画的な感じだね。何が起きてもおかしくなさそうというか…命の危機より面倒事がありそうかな…」
「多分、普通に入学しようとしたら筆記か魔法で特出した成績を出さないとダメなんだよ!…まぁ少しはお金とかで入ってるかもだけど。でも!転入となると物凄いエリートとかコネクションが無いと無理なはずなんだ!流石は
「そう言えばコネがあるって言ってたわね、サンサラ先生。…そんなトンデモ学校に素性の知れない3人を捩じ込むなんて、どんなコネなのよ…」
「ま、ルルエラとは別の学年になるみたいだけどね。でも確かに…知見を広めるなら冒険者をするより学びは早いかも」
「確か校長があのサンサラ・メールウィのお弟子さんだったらしいよ?その辺はほら…サギリの場合は兄弟子になるのかな?」
ラヴァン王国、王都近郊に広がるジュレ森林は低ランク魔物が棲息の殆どを占める危険度の低い場所。
初心者冒険者が必ず通う場所でもあり、深部に赴けば金級の魔物も現れるものの浅い場所には殆ど出てこない。初心者冒険者はこの森で薬草の採取や低級の魔物討伐を経験するのが王都冒険者の通例でもある
そこを散歩兼修行がてらに歩き回る耀、朝霧、ルルエラの3人は現れる適当な魔物を捌きながら話に花を咲かせていた
話の的は当然ながら、朝にサンサラから切り出されたヒュークフォーク王立魔法学院の事だ
あれからルルエラの前知識を元に王都でヒュークフォーク王立魔法学院の事を調べて回った3人だが、耀と朝霧は日本で言う「国立」という認識が大きく間違えている事を認識した
国が建てた学院、という点に違いは無いのだが…その力の入れ方は他の追随を許さない
まさしく国の威信や歴史を掛けて設立された巨大学院であり、国の頂点である王族が通う学び舎として指定された貴族の庭、一国家の規範にして最高学府を示すものこそがヒュークフォーク王立魔法学院である
調べれば調べるほどに、その敷居の高さが伺えるのは主に朝霧と耀のメンタルを少しばかり冷やかしていたのだが…特に気になったのが最近の出来事だった
「…そのヒュークフォーク王立魔法学院で大規模テロが起きたのがだいたい2ヶ月も経たないくらい前の話、と。こういう学院なら警備は厳重な筈なんだけど…」
「テロなんて起きたの?物騒ね…それ、警備が手抜きとかじゃないの?あんまり安心できないわね…ほんとに行く?」
「噂じゃ、昔に大派閥を持ってた王宮官僚の手引だったらしいよ?目撃者多数だから間違いなさそうだし……で、気になるのはこの先。このテロを鎮圧したのが、あの黒い鎧の勇者だって……ーー」
「今すぐ行くわよ。特待生でも用務員なんでもいいわ」
「す、すごい変わり身の早さだねサギリ…。昔の好きな人だったんだっけ?ずっと一緒だったって言ってた…ーー」
「違うわ。今も大好きよ。早く会いたくて心臓が爆発しそうね」
「あ、うん……なんかサギリって、その人の事になると面白いよね」
頬を赤くしながらちょっと体をくねくねと動かしている朝霧の姿は普段の怜悧で凛とした雰囲気からはちょっと離れた可愛らしい物があったが…セリフに反して言葉が堂々とし過ぎていてとても違和感がある…
ヒュークフォーク王立魔法学院は極最近にテロの襲撃を受けていたのだ。これは大々的に報じられていたので図書館の号外記録などですぐに知ることができた
犯人は元大将と元宰相
3年前に国家反逆罪の名目で消されたはずの人物……と、公には公表されているらしいが…
『あの害虫2匹?3年前にジンドーが吹き飛ばした筈だったんだけどねぇ………この前また出てきたから、今度こそ跡形もなく消し飛ばしたそうよ?ザッカーが見てたみたいだし、今度は間違い無いわね』
とはサンサラの言であった。それはもうどうでも良さそうに手をひらひらと振りながら言っていた…あと地味に呼び方が「害虫」だった。どれだけ嫌な人物だったのか…
とは言え、この国にとっては大物中の大物だったのに間違いは無いらしく、殺されたと思われた後も人脈やパイプによって様々な情報や下準備を進めて学院を襲撃。貴族子弟を根こそぎ人質として確保しようとした…学院内部に協力者を仕込み、防御機構を沈黙させて手引をさせたとされている
そして………全ての生徒が見ている目の前で、突如として天井を突き破って突入してきた勇者ジンドーにあしらわれ、首謀者の2人は転移にて逃走
逃走先にて勇者パーティの一人であるザッカー・リオットの手により捕縛、国王の眼前にて処刑が執り行われた…と、されているがどうやら事実は違うらしい
「でもこの世界の事とか、知識とかを学ぶには絶好の機会だと思うんだ。僕も朝霧さんも何も知らずに教国を飛び出してきたし、ルルエラも少し世間知らずっぽいところがあるから」
「うっ………そ、それを言われるとボクもなぁ…。確かに、産まれてからずっと箱の中で過ごして来たから…自信無いかも」
「なら決定ね。さて、どういう学校なのか…行って確かめましょ。私、異世界学園モノも好きよ」
ら
冗談めかして朝霧が笑う。ここまで来て、この世界をゲームやアニメの価値観に囚われたりはしていないもののそれでも楽しみかどうか、と問われれば胸が躍る
話に花を咲かせる3人…
その目の前で
数十体にも膨れ上がるオークとゴブリンの群れがクリスタルのような美しい氷晶に飲み込まれてオブジェの如く固まっていた
そう、ここは魔物の棲まう森
ゴブリンやオーク程度の亜人魔物は頻繁に出没するのだ。当然、無防備に歩いて安全な場所ではないが杖も振るわず詠唱も無しで、朝霧が話しついでに全てを凍結させていた
サンサラの教えは決して温い物ではない。数百年の時を生きる現代最高位の魔法使いである彼女の教えに付いて行けるものなど殆ど居ないのだ
故に、彼女の門下、というのは大勢いてもサンサラが直々に指導を施す直弟子はこれまでに片手の指で数える程度しか存在しない
それは才能やセンス等で彼女に追い付ける者であり、かつ…彼女の教えた事を体現可能という現実的に指導して実るかどうか、という問題がある
程々で良いならば、サンサラが教えるまでもないのだ
なので、弟子ではなく「門下生」を多数抱えている
長い時間を過ごすサンサラの、数えて4番目の直弟子こそが朝霧であった
故に、朝霧の鎖骨の上部分には淡く輝く紋様…弟子を表す円の中に、魔導の極致を表すルーン文字の様な図形と重なる1本の長杖を示したサンサラの紋様が刻まれている
因みに、耀の左肩の上の辺りにも紋様がある
弟子を表す円の中に翻る外套と無骨な短剣、懐中時計が示された紋様はザッカーのものだ。ザッカーに至っては弟子やら教え子なんて耀が初めてのことであり、文字通りの一番弟子であった
耀が腰に下げた幅広かつ分厚い短剣を引き抜き、瞬時に逆手持ちで横一線に振り抜けば、氷の山と化していた魔物達が…振るわれた短剣による斬撃と衝撃により氷ごとバラバラに砕け散った
「ハイゴブリンとハイオーク…銀級魔物で10体以上で群れれば金級だけど、そこまで強くは感じないね」
「この程度でつっかえてられないもの。本当はもっと大技を試してみたいけど、ここはちょっと浅過ぎね。他の人が居たら纏めて凍らせそうだし」
朝霧と耀の力は短期間とは言え、それぞれの教え手の指導訓練の元に間違いなく、目に見えて成長を遂げている
朝霧は魔法のバリエーションを増やし、魔法の出力を高め、さらには杖無しでの発動と簡単な魔法ならば詠唱無しでの行使すらも容易く可能とした。複数魔法の同時使用にも手を掛けており、一属性で言えばサンサラでも目を見張るものがある程だ
耀は経験不足であった剛短剣術をザッカーの我流から学び、強化魔法の出力を高め地球的な発想から抜けた3次元的な機動力による戦闘をザッカーから吸収。特に、ザッカーは自分との打ち合いを重視する実践思考の訓練がメインであり、一番実践的に成長を遂げているのは耀であった
ルルエラも、サンサラの元で基本魔法を習熟させていき、着々と魔法使いとしての力を高めている。とは言え、彼女は今のところサンサラの弟子という扱いではない…
これは、真にルルエラの才能を引き出す為には彼女の抜きん出た才能である聖属性魔法の鍛錬が必要であり、サンサラは聖属性魔法を操れないからだ。
元より教国ではトップの聖属性魔法使いとして聖女の頂点と扱われていたルルエラにこれを教える事が可能なのは…それこそ、聖属性魔法を極め尽くした者でなければ役不足
だが、これに関してはサンサラに宛があるようで…
『ルルエラ、あなたに関しては……学院に行けば問題ないんじゃないかしら?これ以上ないくらいの『先生』が、学院に居るもの』
とのことだった
ちなみに、3人はサンサラから伝えられた世間一般の強さの基準を頭の中に入れてはいたが……現時点で、自分達とどれ程の差があるのかを、この時は分かっていなかった
それを思い知るのは……学院に入って色々とやらかしてからの話である
ヒュークフォーク王立魔法学院への転入は、直ぐ目の前で迫っているのだった
ーーー
「さて、ドロテオには連絡してあるし……転入は問題なさそうね。持つべきは優秀な弟子、といったところかしら…?朝霧とルルエラは少し突っ走る所があるけれど…耀が居れば問題なさそうだし、わりといいチームよねぇ」
メールウィ魔法本店は臨時休業の看板を玄関に下げていた……とは言え臨時休業という名の、サンサラ仕事兼サボり時間なのだが…
3人が冒険者活動のついでに腕試しにジュレ森林に向かった後、店のカウンターで肘を着いたまま先程まで光を放っていた水晶玉から魔力を切り、布を被せるサンサラは今朝に学院の件を提案したものの…実はその話や手続きやらは少し前から進めていた
一月近く彼らと共に過ごして来たが……悪い子達ではない。朝霧も耀も…最初はレルジェ教国の肝入り聖女と警戒していたルルエラの事も、今では良い子だと理解している
そこに加えて、あのジンドーからの託され物だ。気が入るのも当たり前だろう
ドロテオ・ガルバニアは100年以上も昔にサンサラが己の直弟子とした二人目の弟子であった。現在、ドロテオはヒュークフォーク王立魔法学院の学院長を務めており、学院始まって以来の傑物、最優の学院長とまで謳われる男でもある
彼にサンサラから直接のお願いとあらば、3人の転入程度はお茶の子さいさい。連絡して3日後には制服に教科書、学院生活の必需品から寮の鍵まで送られてくるほどの手回しの良さだ
サンサラからのお願いがどれ程の威力だったのかを物語っている
それもその筈、彼女を慕う直弟子達からすればサンサラの「お願い」は全力で叶えるべき最優先事項であった……それこそ、自分の地位立場を利用する事すら厭わない。それ程の恩義があるのだ
ドロテオも機嫌よくこれを了承…どころか、「儂の妹弟子にもなる子だ。3人纏めて、しっかりと取り計らいましょう」と笑いながら受け入れてくれたのだった
サンサラ・メールウィ…それは魔法界における最高権威に等しい魔導の追求者にして世界最高の魔法使いの名である
本人にその気は無いが、然るべき態度で臨めば貴族どころか王族すらも無碍に出来ない、魔法の極致に手を掛けた偉大なる魔法使い…現学院長が事業のドロテオでなくとも、彼女が「よろしく」と声をかければ誰であっても頭を下げて「是非に…」と返すだろう
……そんな彼女も、今は肘を付いてコーヒーを口に付けているちょっとオフな姿だがそんな気の抜けた姿で別の水晶玉に目線を向けていた
『で、そんなだらけてるのは珍しく色々と根回ししてたからですかい、姐さん?』
「そんなんじゃ無いわよ、ザッカー…。これからのことを考えて気が重くなっただけよ。既に調べに行かせたけれど……ジュッカロの封印は完全に崩壊、…痕跡的に間違いなくグラニアスだけど
完全に討伐された、と見ていいわ」
『殺しきったのかカナタ君…しかしまぁ、ガヘニクスは泳がせておいてグラニアスはここまで大掛かりにしてでも始末したかった理由はなんなのか…ちょいと気になるね。死体は?』
「既に無かったわ。カラナックの周りでもジンドーの兵器がこぞって魔物の死体処分してたんだからびっくりよ、ほんと…。ジンドーの魔道具があんなに堂々と大群で姿を出すなんて、この3年で初めてよ?…何かが始まった、と見るべきよザッカー」
『そりゃ言えてるね。彼が何を企んでるのか分からないが……彼の目は、何か目的がある者の眼だった。何かを目指して、未だに止まらずに進んでる…そんな感じさ。封印と魔神族はおじさん達でも独自に追い掛けてた方がいいね』
「問題はそこよねぇ…。今回で分かったけど、ジンドーは自分の目的の為に山や森の1つや2つは平気で消すわ。昔からそういう節があったけど、今回のはそれが顕著ね…目を光らせてないと何をしでかすか分からないわよ?……ま、安心なのは彼がカラナックの街を守った事かしら」
『そういう所は変わらないねカナタ君。昔から、巻き添えは好まないところは…詳しい話はラウラちゃんから聞けるんじゃない?学院が夏休み明けなら帰ってくる筈だし』
水晶越しにザッカーと話すサンサラ…自分の門下をカラナックに向かわせて周辺の調査をさせ始めたのが数日前の事
聞けば大規模な戦闘が起こった、とカラナックも大パニックに陥ったらしい。街の住人も死を覚悟するほどの魔物の大軍勢…それを勇者ジンドーの機兵が迎え撃ち、戦争の如き大戦となっていたと言うのだ
水晶越しに映された、淡々と魔物の死骸を積み上げて燃やしにかかる魔導兵器の姿を見ればサンサラも目を細める…これまで、目立つ事は回避してきた彼が人目も気にせず動き出したのだ。何かある、と考えないほど平和ボケしていない
とは言え、現時点ではジンドーの後追いが精一杯なのがサンサラの歯痒いところだった
「そのラウラも、いつ帰ってくるのか分からないのよねぇ…。学院の再開は3日後よ?王都に戻って来た、なんて情報は入って来てないし…いくらなんでも遅すぎるわ。グラニアスを討伐してから軽く10日は経ってるのに、いつまでカラナックに居るのかしら…」
そのあたりの話も、カラナックへ行っていたラウラに話を聞きたかったサンサラだが何故か彼女がカラナックから戻って来ない…戻った、という話が一向に耳に入ってこないのである
大貴族、クリューセル家の娘かつ大聖女であるラウラがカラナックと繋がる王都の転移魔法陣から現れれば必ず騒ぎになる。それが無いならばラウラはまだ転移してきて居ない、という事なのだ
それ程までに向こうで長居する理由が思い浮かばない…サンサラは頭を悩ませていた
そう…思い浮かぶはずも無い
まさかあのラウラが…
勇者と身も心も結ばれて爛れたような日々を送っていて戻って来ていない、なんて事は!
自分の部屋やらオアシスやらではっちゃけて色々と乱れた日々を過ごしてて戻るのが後回しになった、なんてことは!
思い浮かぶはずもなかった!
そもそも、サンサラが最後にラウラと会ったのは「勇者ジンドーの正体に心当たりがあるかもしれない」というあやふやなタイミング…その発想に到達するはずも無いのであった
「……あら、ザッカー?聞こえてる?」
『………ーー…………』
「変ねぇ……ちょっと、しっかりしなさいよ。直すの大変なのよ、これ」
『…………………………ーー』
ふ、と気が付いた。ザッカーからの返事が来ない…いや、通信していた水晶玉は砂嵐のように映像が乱れており先程まで映っていた中年男の姿も見えなくなっていた
こつこつ、と何度か小突いてみるも直る様子はない…この水晶玉はサンサラのお手製なのだ。距離が離れても通信出来る魔道具はなかなかお値段の張るものである…サンサラ程の魔法使いならば自前で作れてしまうのだ
だが、壊れると非常に面倒臭い…最悪、1から水晶玉に術式を刻んだり付与する所からやり直さないといけなくなる
それが音も映像も示さなくなったのだから、溜め息とともに肩を落とすのも無理は無かった
新しい朝霧、耀、ルルエラにも持たせてあげなければならないと言うのに…
「……いえ、ジンドーに作らせるのもいいわね。もっと持ちやすくて性能の良い魔道具、作れそうだし……あの子達を預かったお礼くらい貰っても怒られないわよね」
ーーそうだ、彼に作ってもらおう。魔道具作りの天才だ…きっとこんな水晶玉よりもっと性能が良い通信魔道具を作れるだろう
あと自分のやつも作ってもらおうか…
もしかしたら、彼ともいつだって通信出来るようになるかもしれないのだから…
ーガチャンー
音がした
鍵が開いた音だ…正面にある店の扉の鍵が、ひとりでに外側から開けられた音
この店扉の外鍵は自分しか持ってない
普通に開けられる者は居ない筈
閉店の看板も外に出ている。この状態で店に無理矢理入ってくる相手など、どのような輩なのか…
「…悪いけれど、今は臨時休業よ?外に書いてなかったかしら…それとも、何か私に用でもある?」
「あぁ。店じゃなくてあんたに用事がある」
目を細めるサンサラに、侵入者は頷いた
ーー自分の事を魔法使い、サンサラ・メールウィだと知ってやって来たのならば…強盗なんて事はないだろう。そんな命知らずはとうの昔に根絶させた
だが、侵入者はあまりにも堂々とし過ぎている…店の内装やら商品やらを見て少し興味深そうにしてる辺りあまり緊張感が無さそうにも見えた
…その容姿は少年と青年の間にあると言えるだろう。短い黒髪に黒い眼が珍しく、武器や防具の類は何も着けずにラフな麻製の半ばまでボタンで留めてある半袖に長ズボンの夏着に身を包んだその男はポケットに無造作に手を突っ込んだまま、警戒するサンサラを他所に彼女が座るカウンターの前までやって来る
普通はどう見ても、明らかにこの状況で穏やかな展開は無いだろう
サンサラは自分の手に、密かに魔法陣を編み浮かべた
この距離であろうとも、大抵の輩であれば問題ないーー
「任せっぱなしだったからな、様子を見に来たんだ」
「……なんですって?」
その言葉の意味を、サンサラは最初に理解できなかった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【後書き】
ーー実はね、前話の一部分に色々と声が上がってるんだ…シオンちゃん…
「き、急に穏やかではなさそうな話になりましたね…」
ーー皆は勘違いしてる…私がNTR趣味のバッドエンド主義者だと。こんなにハッピーイチャイチャな普通のお話を書いているのに何故こんな定評が着きそうになっているんだ…
「いえ、それは完全に自業自得です。というかあれだけ色々と書いておいてイチャラブ系ハッピーエンド好きだったんですね…」
ーー前からそう言ってるでしょうに!とは言え、確かに多少の窮地はあって然るべき、という自論は崩さないけどね
「その窮地の種類が問題なのでは…?前の話から皆さん、とても心配してるんですよ?……本当に挿れる直前までされるのではないか、と」
ーーあ、それね。いやぁ、そういうコメント貰ってたからつい…。でも、アリかナシかで言うなら悩みどころだ……
「だから脳を破壊されそうな方が居るんですよ。だって、本編ではエデルネテル出てきてしまったじゃないですか。どうするんですか?エデルネテル編…荒れますよ?」
ーーむしろ荒らしていくか…。あ、一応断言はしておきますけど、このお話はちゃんと純愛ハッピーエンド系の物語なのであしからず。たまにNTR好き読者さんからもコメントいただくけどね、申し訳ない…
「いえ、私はむしろ安心しましたが…流石の私も、カナタ以外とエッチするのは嫌ですよ?」
ーー
「それは…趣味が別れますね。まぁ私からすれば御免被りたいところですが…というか、私達全員がそうだと思いますよ?あ、そう言えばラウラさんは一度タッチされてましたね」
ーーそ。私自身が多少の刺激と思っているのと、後は治安の安定しない異世界だからこそのリアリティを出したいのが理由かな。割と細部に入れたつもりだけど、このお話の基本世界観はダークファンタジーだから
「確かにえげつない描写はそこかしこに散りばめられていますね…。しかもこれ、手加減してますよね?」
ーーそりゃ書こうと思えばもっとエグい書き方は出来るよ。男は金品、女は体……私の中ではそんなイメージでダークファンタジーが構成されてるかな。だから、むしろ手心加えてる方かな
「うーん……それを考えると私達はマシなんでしょうか…?」
ーー元々そういうダークファンタジーが好きなんだよ、私は。ゴブリン◯レイヤーも好きだしア◯クニドみたいなのも好き…発想とか世界観をそこから抽出してるから、ちょっとした窮地な展開も当然あるよ、って事。そこは断言しておくね
「はぁ……先が思いやられますね。…、ところで、最初に言ってた「前話に賛否があった」っていうのは何だったんですか?割と日常回だったと思いますが…」
ーーそれが…一部の読者さんがね、ライリーにおっぱい揉まれたシオンちゃんに少し脳を焼かれてしまったみたいで…。いや、ほんと、個人的には同性のライバルとか友人同士のスキンシップで書いたつもりだったんだよ?けど、ここにNTRの波動を感じ取った人も居たみたいでね
「あー……確かにすぐお仕置きしましたけれど。成る程……あれでダメージがあるなら、あなたの作風は読者さんには効くかもしれませんね」
ーーちなみに、その116話に関して「何故なんだ、あり得ない…」みたいなコメントが何故かレビューコメントで来ちゃっててね。各話コメントならまだしも、流石にお話の看板にも載ることもあり、申し訳ないですが消させて頂きました
「罪な物語ですね、本当に…でも、それだけ登場人物に感情を持ってくれているなら嬉しい限りです」
ーーそのレビューコメントに関しては申し訳ないと思いながらも消させて頂きましたが、私のスタンスとしては評価や提案の域を超えた悪意ある攻撃的な物は全て削除の構えです。これに関しては「せっかく貰ったのに」という意見があるかと思いますが、断じて変えるつもりはありません
ここからは追記ですが
もう1件、レビューコメントがありましたが内容はかなり攻撃的かつ罵倒的でしたので即削除しております。これは例え☆評価が付いていようとも関係ありません
一応言っておきますが、私は趣味で書いているのであって作家として生計を立てようとしている訳ではありません。「こうなら良いかも」「ここはこれなら分かり易い」とかなら勿論大歓迎ですが、
実は前も来たことがありまりました、「作品の為に」と言うような形で非常に攻撃的で暴言でしかない発言が送られてくる場合はこの手の対応をしますので、ご了承下さい
そういう方は、もしも納得出来ないお話なら、何も書かずに読むのをやめることをオススメ致します
カクヨムには、他にも沢山の物語がありますので是非、自分が満足するお話をお探しください
一応補足ですが、これまで頂いたコメントの中でそれに該当するものは2件程度で、レビューコメントでは今回が初めてです。毎話温かいコメントを下さる方もいらっしゃいますし、他にも何の気なしに書いていただけるのはとても嬉しい
ですが、明らかに喧嘩腰の方が居ますのでここまで書いた物はそういった方々向けです
この件に関しての反応は読者さんからは無くて大丈夫ですので、もし何か書いていただけるならば追記部分は何も気にせずにお書き下さい。読者さんからの反応がモチベーションになるのは間違いありませんから
書き汚し、失礼致しました
今後とも、よろしくお願い致します
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