名前をつけて欲しいと言われた。

「そういえば、お前名前は何て言うんだ?」


朝食の最中に昨日の夜聞こうと思っていたことを口に出した。


子供はビクッとして一瞬視線を落とすと、表情を引き締めてこちらを見つめてきた。


「俺の名前、つけてくれないですか。」


予想とは違う反応に驚き固まっている僕をよそに、子供は続けた。


「俺はもうあの家に戻る気はありません。

拾ってもらった恩をあなたに返したいんです。

だから、あなたが俺に名前をつけて下さい。

あなたの弟子として新しい人生を送りたいんです。」


そう話す子供は覚悟を決めた表情をしていた。


僕はうんうん唸りながら、そこまで言われると立派な名前をつけてやらなければと思い、必死に知識をフル回転させた。


「リド!リドはどうだ!?」


はっと思いついた名前を口に出してみる。


「どんな意味なんですか?」


僕はニコニコしながら名前の由来について話す。


「お前の瞳はまるでペリドットのような色をしていて綺麗だからな!

しかも、お守りや喜びの感情を感じれるといった逸話もあるからな。

これからのお前の人生が幸せなものになるようにという気持ちもこもってるぞ。」


由来を聞いた子供は大きく目を見開いた後、顔を真っ赤にして下を向いた。


「ん、あれ、嫌だったか?

ちょっと安直すぎたか?」


「…よ。」


ぼそぼそと小さな声で子供が何か言っているが、聞き取れない。


「何だ?もう少し大きな声で喋ってくれ。」


僕が身を乗り出しながら聞き返すと、子供はバンっと大きな音をたてて立ち上がり、顔を真っ赤にして叫んだ。


「リドでいいですよ!!」


子供、もといリドはそのままバタバタと大きな足音を立てて部屋に籠ってしまった。


「…子供って難しいな…。

思春期ってやつか?」


僕は一人残された食卓を見つめながら、ぽつりと呟いた。

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魔女の日記 らんぐどしゃ @ramanama20

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