悪役令嬢です。婚約破棄されるはずの王子に何故か執着されているようです・・・
アトハ
1話. 予知夢
「ルーナ、きみとの婚約を破棄させて欲しいんだ」
王立魔術学院の卒業パーティの直後。
呼び出されて向かった庭園で、私──ルーナ・ランベルドは突如として婚約者からそのような言葉を告げられたのでした。
「そうですか。やっぱり、ペティリカさんですか?」
「本当にすまない。どうしても私には、君を愛することは出来ないんだ」
何度も頭を下げているのは、この国の第一王子であるセオドリック殿下です。
王族の証であるプラチナブロンドの髪に、宝石のように透き通るエメラルドグリーンの瞳。
気まずそうに目を逸らされ、私は思わず泣きたくなりました。
「私は誰にも興味が持てなかったんだ。そんな私を、ペティだけが分かってくれた。ペティだけが私の理解者だったんだ」
「そうですか」
私は、何を聞かされているのでしょうか。
もともと王家と公爵家による契約のような婚姻関係でした。
とうの昔にセオドリック殿下の心が、私から離れていたことは知っています。
それでも私にとって、セオドリック殿下は初恋の人で──
「さようなら」
せめて涙は見せないように。
お幸せにと気丈に笑みを浮かべ、そっと見送るのが私に出来る精一杯。
そうして、私とセオドリック殿下の婚約は解消されて……。
──王国は滅びました。
王国滅亡の原因は、愚王・セオドリックによる悪政だと言われています。
彼が選んだ王妃・ペティリカは、最悪のわがまま王妃でした。
国家予算の大半を使い込み、国の財政は悪化。
重税にあえぐ国民を余所に、王城では1年通してパーティが開催されていたと言います。
お飾りの王と化したセオドリックに、王国を立て直す力はありませんでした。
そんな圧政に民は立ち上がり──ついには王国で革命が起こることになったのです。
「馬鹿みたい……」
あれだけ美しかった王都が、今や火に包まれ無残な廃墟と化していきます。
気がついたときには、どこにも逃げ場はありませんでした。
──革命の火の手に巻き込まれ、私はひっそりと命を落とすことになったのです。
◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆
◆◆
……という夢を見ました。
「ひぃあぁぁぁああああ!?」
思わず素っ頓狂な悲鳴を上げる私。
殿下からの婚約破棄。
火に包まれる王都の街並み。
王国を飲み込んでいった革命。
そして──滅亡。
記憶が。感情が。
脳に焼き付いているそれらが、あまりにも生々しくて。
ただの夢だとは、到底、思えませんでした。
混乱のまま、私は姿見の前に立ちました。
ぷにぷにとした頬が可愛らしい小さな幼女が映し出されています。
推定年齢は、おそらくは12歳程度。
「まさか──巫女の力……」
──7年前に巻き戻ったんだ
己の姿を見て、私は確信しました。
私が生まれたランベルド公爵家。
そこに生まれた女性は、ときおり不思議な力を持って生まれると言われています。
通称、巫力──未来を見通す力
あの夢は、私の身に降りかかる未来を表しているに違いありません。
つまり私は、このまま行くと──
セオドリック殿下と愛の無い婚約をして。
冷え切った関係性は何ら改善せず、卒業パーティでポイッと捨てられて。
最期には王国の革命に巻き込まれてデッドエンド。
「冗っ談じゃない!」
私は、無意識に叫んでいました。
なんとしてでも未来を変えなければ!
ちっちゃな手を握りしめ、私は一大決心しました。
「どうしよ、どうしよう!? お父さまに私が巫女の力に目覚めたことを伝える?」
真っ先にそんな考えが浮かびましたが、
「……駄目ですね」
未来視の巫女の力は、あまりに強力です。
歴史の中で巫女の力を得たランベルト家の少女は、みな歴史に名を轟かせています。
そして争いに巻き込まれ、大抵は若くして命を落とすことになっています。
お父さまは、とても野心に溢れた方です。
娘の私のことなんて、都合の良い駒としか思っていないでしょう。
もし知られようものなら、間違いなく私の力を利用しようとするでしょう。
幸せになりたければ、必ず自分の力でどうにかする必要があるのです。
う~ん、と私は考え込みます。
「すべての始まりは、セオドリック殿下との婚約。あれが始まりですね……」
セオドリック殿下の幼少期。
見目麗しい第一王子は、常に社交界でも注目の的。令嬢たちの憧れの視線を集めてやまなかったですし、その微笑まに当てられて虜になった令嬢は数知れず。
まさか私が婚約者に選ばれるなんてと、夢の中で、私はすっかり舞い上がっていました。
幸せな未来が訪れると、疑うこともなかったのです。
……すべては幻想でした。
「なら、私の行動方針は──」
私は脳内で、未来に向けて計画を練っていきます。
取りうる選択肢は……
1. セオドリック殿下と徹底的に距離を取る!
これは絶対条件です。
夢の中で、私の人生が狂った原因は殿下だと言っても過言ではありません。
私の平穏な暮らしのため、徹底的に距離を取ることにしましょう。
2. 革命の阻止!
革命の原因は、何だったのでしょう?
革命が起きたのは、私が19歳のときだから──実に7年後。
ふむ、12歳の私にどうにか出来ることではありませんね。解散!
それよりも現実的なのは……
3. 国外で1人で生きていく基盤を作る!
これしかありませんわ!
つまり、まとめると、
「殿下と徹底的に距離を取りながら、国外に1人で生きていくための基盤を作る!」
──完璧な計画ですわ!
そう口に出して宣言したところで、
「ルーナお嬢様、いよいよ明日はセオドリック王子の誕生パーティですね。うんとオシャレして行きましょうね~!」
「えぇえええええええええ!?」
部屋に飛び込んできたのは、ウキウキした様子のメイドのソフィさん。
……私の完璧な計画は、始動1分も立たずに頓挫しようとしていました。
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