4話. 殿下の新たな恋を応援しますね!
私のパーティ会場での振る舞いは、完璧だったと言えるでしょう。
挨拶はササッと切り上げ、壁の花に専念。
それだけでなく殿下が起こした騒ぎに颯爽と乗り込み、あろうことか一方的に説教をぶちかます始末。
これなら婚約者候補に名前が上がることすら、あるまい!
──そう思っていた時代もありました。
***
「ルーナお嬢様! セオドリック殿下とのご婚約、おめでとうございます!」
「はぁああああ!?」
ある日、私の部屋に入ってきたメイドのソフィさんは、あろうことかそんな爆弾を落とします。
それは王家とランベルト家の間で、正式に私とセオドリック殿下の婚約関係が結ばれたという知らせでした。
「第一王子の婚約者に選ばれるなんて!
私はルーナ様にお仕えできて、本当に嬉しいです!」
ニコニコしているメイドのソフィには悪いけど。
──どうして、そうなった!?
私は、内心で悲鳴を上げることしか出来ませんでした。
私は脳内目標と現状を照らし合わせます。
===
1. セオドリック殿下と徹底的に距離を取る!
→ アウト!
何故か婚約者になってしまったらしい。なんで!?
2. 革命の阻止!
→ 保留中!
3. 国外で1人で生きていく基盤を作る!
→ 保留中!
(これから本気出す!)
===
ふ~む……。
本当に、どうしてこうなった?
目下の最大の問題は、セオドリック殿下ですかね。
ひと時の気の迷いだとは思いますが……。
なんせ夢の中で、殿下は私に微塵も興味ありませんでしたからね。
「私がするべきは、セオドリック殿下の新たな恋の応援。
それで間違いないですね!」
いずれ殿下に婚約破棄されることは決まっています。
こうなってしまったなら、できるだけスピーディーで円満な婚約破棄を目指しましょう。
◆◇◆◇◆
そんな決意をしてから数日後。
何故か私は、殿下に王城に招かれていました。
「なんで!? 夢の中で、殿下から私を誘うことなんて一度もなかったのに!?」
知っている殿下と行動が違いすぎる!?
私は、軽い混乱状態に陥ってました。
「ルーナ様、ドレスとてもお似合いですよ。
殿下も喜ばれると思います!」
「ええ、そうかしら……!?」
メイドのソフィは、とても楽しそうに私を飾り付けていました。
ソフィが楽しそうなのは何よりですが、いずれ婚約破棄されることを思うと申し訳なくなりますね。
殿下の狙いは何だろう?
頭にハテナをいっぱい浮かべたまま、私は王城に向かうのでした。
***
「失礼します」
そうして私は、セオドリック殿下の部屋に呼ばれました。
私の姿を見て、彼は何故かとろけんばかりの笑みを浮かべたのです。
……セオドリック殿下って、こんなに表情を表に出す方だったかしら?
私は疑問に思いながらも、
「なんのご用でしょうか?」
「婚約者同士が会うのに、何か理由が必要ですか?」
質問に返されたのは、そんな答え。
「私と殿下は──その……。形だけの婚約ですよね?」
「は──?」
あ、つい思っていたことが口に出てしまいました。
見ればセオドリック殿下が、目を三角にしています。
図星を言い当てられて、驚いたのでしょうか?
う~ん。
本当に、どうして婚約者に私を選んだのでしょう?
何度考えてもサッパリ分かりません。
一度、婚約破棄されたことがある私でなければ、舞い上がってしまうところです。
……あ、そうか。
婚約者を見つけろと周囲が煩いから、誰かを探す必要があったのでしょう。
だから身分的に問題がなく、当たり障りのない適当な令嬢を、とりあえず婚約者に選んだということですね?
「ふふ、心配しなくても勘違いなんてしません。
分かりました。そういうことなら殿下が本当に好きな人を見つけるまで。
その役目を受け入れましょう」
「ルーナ、それはどういう意味?」
不機嫌そうな殿下は眉をひそめました。
分かっています、と私はうなずきます。
「心配しないで下さい。
殿下が本当に好きな人を見つけたとき、私は喜んで婚約を解消しますから!」
殿下の狙いが分かってスッキリした私は、思わず満面の笑みを浮かべてしまいました。
彼の新たな恋を探すために、もうペティリカさんを探し始めても良いかもしれませんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます