第5話 あたしの気持ち 

 マイちゃんは、幼馴染みの女の子。

 いや、男の子なのかな? どっちかわからなくなってきた。


 昼間の告白の衝撃は、家に帰った今でも続いてる。

 あたしは自室の机の上でうつ伏せになりながら、悶々と考えを巡らせていた。



 思い返してみたら、マイちゃんが男の子だって思える事はあったかも。

 例えば以前、二人して雨に濡れてあたしの家に駆け込んだことがあったけど。着替えようと服を脱ぐあたしを見て、慌てて背を向けてたっけ。

 あれってやっぱり、そういうことだったのかな?


 当時はマイちゃんのことを女子だって思ってたから、目の前で着替えるのも平気だったけど。あたしってば、なんて大胆なことを。

 マイちゃん、きっと困ってたよね。


 ま、まあやっちゃったものは仕方ないけど、問題はこれから。


 秘密を告げられた直後は混乱して、手を振り払ってしまったけど。家に帰って頭が冷えると、だんだんと後悔が押し寄せてきた。


 マイちゃんがどんな気持ちで、本当のことを告げてきたのかは分からない。だけどずっと抱えていた秘密を言うんだもの。きっと、凄く怖かったんだと思う。

 そんなマイちゃんに、あたしは何をした? どうして受け止めてあげずに、拒絶したの?


 思い返すと、全身が氷のように冷たくなる。胸の奥が、刺されたみたいに痛い。


 あたしはあの時……ううん、きっと今までもずっと、マイちゃんの事を傷つけてきたんだと思う。

 親友なのに。親友だったはずなのに、大事なことを何もわかっていなかったから。


 可愛いものが好きで、メイクが好きで、スカートを履く。そんな男の子なんておかしいって思ったけど、本当にそう?

 そんな男子は珍しいけど、それは好きになったものがたまたま女の子向けの物だったって言うだけ。

 何かを好きになるのに、理由なんていらないのに。それらを好きになった事をおかしい、間違ってるって言われたら、どんな気持ちになるのかな。


 おかしかったのは、きっとあたしの方。好きになるのに、正しいも間違いもないんだもの。

 なのにどうしてすぐに、受け入れてあげられなかったんだろう?


 真実を知った今、あたしはどうすればいいの?

 ううん、どうしたいって思ってる?


 あたしは男子が苦手。だけどマイちゃんは親友。それじゃあマイちゃんが男の子だったら、もう親友じゃなくなる? 友達をやめちゃうの?

 そんなの……嫌だ。


 気がつけば頬を、一筋の涙が伝っていた。

 机から顔を起こしてそれをゴシゴシとこすり、泣くのを止める。


 あたしはきっと、マイちゃんの事を傷つけた。なのにまだ友達でいたいだなんて、勝手だって分かってる。

 だけどこれが、あたしの素直な気持ちなんだ。


 それじゃあマイちゃんは? 

 マイちゃんはこんなあたしのことを、まだ友達だと思ってくれているのかな? 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る