最終話 情けは猫のためならず
あのクリスマスの夜からしばらく経って、ボクは今天国にいる。
コタツと言う名の、天国に。
ふふふ、ぬくぬくでホカホカだあ。寒いお外とは大違いだよ。
幸せな気持ちでお昼寝をしていたら、誰かが布団をめくってくる。
「あ、ギンカ。こんな所にいた!」
顔を覗かせたのは、この家に住む五歳の男の子、三太くん。ボクの命の恩人だ。
クリスマスの次の日の朝、ボクは寒さで凍えそうになっていたんだけど。たまたま通りかかって見つけてくれたのが三太くん。
三太くんはママに頼んで、ボクを病院に連れて行ってくれたんだ。
もう死んじゃうかもって思っていたのに、ボクは本当に運が良い。
しかも、しかもだよ。ボクは三太くん達家族に引き取られて、ここ星野家の家猫になったんだ。
おかげで毎日おいしいご飯が食べられて、温かい場所で眠れる。そして何より、家族ができた事が嬉しい。
「ほらほらギンカー、猫じゃらしだよー」
三太くんがユラユラと揺らす猫じゃらしを、肉球でパシッ、パシッとはじく。
ふふ、やっぱり良い事をしてたから、良い事が帰ってきたのかな。
猫の世界では、『情けは猫のためならず』って諺がある。
これは情けをかけてもその猫のためにならないと言う意味じゃない。誰かにかけた情けは、いずれ巡り巡って自分に返ってくると言う意味だ。
ケガをした野良猫にお肉をあげて、猫の兄妹に寝床を譲ったのが、とびきりの幸せになってボクに帰ってきたのかも。
「ギンカ、次は何してあそぶ?」
ニコニコ笑いながら、三太くんが話しかけてくる。
あ、そうそう。『ギンカ』って言うのは、三太くんがつけてくれたボクの名前さ。三太くんはボクの灰色の毛並みを、綺麗な銀色だって言ってくれて。そこから『ギンカ』って名前をつけたんだ。
ふふふ。少し前までは名無しの野良猫だったのに、恰好良い名前を貰っちゃった。
ママ、ボクはこれからこの家で、『星野ギンカ』として生きていくね。
結局サンタさんからのプレゼントは貰えなかったけど、代りに三太くんから大きな幸せを貰ったよ。
どうかみんなにも、素敵なクリスマスが訪れますように。
おしまい(=^⋅ω⋅^=)
灰色ノラ猫のクリスマス 無月弟(無月蒼) @mutukitukuyomi
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