「私は断じて、不審者なんかじゃないのに!」
冒頭からして主人公が不審者として連行されている、笑えるシチュエーションにこのセリフ。王宮ものだったよね、と思いつつ、主人公に何があったのかと思ってみれば、お仕えするお嬢様を思うあまり、暴走してしまっていました……。おう!
その末に主人公・キアは、王子のヴィクトール殿下と彼に仕える騎士・イザックさんのもとに連れてこられ、有無を言わさず働かされてしまうのですが……。
……というとても可愛く明るい設定のお話です。
主人公のキアが、ある意味ブレーキの壊れた暴走列車のように突っ走るのは、見ていて気持ちよく、微笑ましくなります。かわいい、かわいすぎるこの主人公!キアちゃんいいね!キアちゃんかわいいよ!!!と思いながら読み進めておりました。最後はいままで読み進めてきた物語の展開を裏切り、全ての謎を解き明かす新事実が明らかになって、「おおお!」となりました。
一番好きなのが歩く恐怖じゃなかった氷の騎士・イザックさんのこのセリフ。
「どこにでもいる薄茶の髪。よくある緑の目。これといった特徴のない目鼻立ち。会ったばかりの者さえ一瞬で忘れるその平凡さ……実に非凡だ」
キアちゃんの前途に想いを馳せて目の前が真っ暗になると同時に、どこかおかしなものいいにウフフとなりました。是非ともイケメンヴォイスで堪能したいセリフですね。
お話自体、イザックさん(概念)とか陰謀や女同士のあれそれなどハードなシーンは出てきますが基本的に背筋が凍るほどの深刻な描写はありませんので、身構えることなく素直に読むことができますし、5話一万文字くらいですので、お茶菓子とともに素敵な物語をというシチュエーションで読むのに最適です。