いつも思い出に置いていかれる

加賀・マトぺ・サキマリの3人組の、噛み合ったり噛み合わなかったり、お互いへの理解があったりなかったりしながら一緒にいる関係性がとても好きで、ずっとこの3人の関係が続いたらいいのにな、と思って読んでいました。
悲しいです。
4話と5話、夜の学校のプールで泳ぐエピソードが特に好きでした。こんなのもうこの3人好きになっちゃう……と思ったんですよ。
終わりは突然。残酷。

物語の初めに「今」として語られる加賀・サキマリ・マトぺの時間が、最終話ではもう過去の回想になってしまっている……その何とも言えない寂しさ・無常感に打ちのめされてしまいました。
「あの頃」を回想している、今のこの瞬間さえもいつか思い出になってしまう寂しさ。ずっと回想の中の「あの頃」でいられたらいいのに、と思ってしまいます。でも時間は進んでついに最終話、また新しい日の始まり。
加賀と明日歌ちゃんが一緒にいる日々もいつか回想になってしまうのかもしれないけど、今はそんな事は関係なく2人には駄菓子を食べたりしていてほしいと思います。

犬怪さんの文章の、そっと寄り添ってくれるような、かと思ったら急に突き放されるような、でもどこか優しさも感じられるようなところが好きです。
淡々とした語り口でありながら、その内側には時に激情が渦巻いて、読んでいると微かな痛みと共にどこか癒されるような感じもするのです。勝手にそんなイメージで読んでいます。

それから、現在の場面から過去の回想の場面に、そして回想から現実へとシームレスに場面転換していく描写が自然で、考え事や回想から意識が戻る時って確かにこんな感じだなあ……と、さり気ない部分にも勝手に感動したりしてました。
これ、読んでいてすごく気持ちよかったのですが!すごくないですか?すごい!

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善悪みだり

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