第3話 滝つぼ
河童が帰ろうとするので、やっぱり皿から手を離すのを止めた。
「もうちょい、ここに居なよ。河童さん!寂しいじゃん!」
「俺は、寂しくないわーーー。」
「また、また~そんなこと言って~。いいやつじゃん河童さん。」
へらへら笑っていたが手は離さない。
「いいやちゅじゃ~かっぱ~」
子鬼も言う。
とにかく、その集落の中まで見てから、河童と別れるか決めたいとふと思った。
「仙人様~こいつ、おいらをこうやって苛めるんです!!」
「ハハハハハ。河童、お前、皿を取られるからじゃろ。」
仙人は、あまり助ける気が無いようだ。
「これ、迷い人、あの、滝つぼの側に集落がある。連れて行ってやろう。」
「おっけー。いくいく。さあ、一緒に行こう!河童さん。」
「別に行きたくねーよ。」
「おけ~いちゅ、いちゅ、さあ、いっちょにいこうかっぱ~」
子鬼がすこぶる楽しげなのだが、親鬼がこないかちょっと心配になったので聞いてみた。
「子鬼じゃない・・・鬼?お母さん、心配しないのか?」
「ん?ははうえさまのこちょか?」
「そう。そう。」
「だいちょうぶじゃ。たぬきちもおりゅから。」
にんまり笑う子鬼なのでまあ良いかと思った。『最悪、仙人もいるし~。』と心で思ったが、さっきの河童に対するのを考えると、頼りになるのか?とも考えた。
「仙人様、親鬼出てきたら、戦ってね。」
「えっなんで?子鬼に言わせればええじゃろ~。連れ去られたって。あっ違うな付いて来たって。」
なんて、いい加減に答える仙人だ。
滝つぼまで来ると、パオのような家がいくつかあったが人影は、無かった。
「仙人様、誰もいないじゃん。」
「うむ。こないだまで、居ったんじゃがな。はて~また、滝つぼに飛び込んだのかな?」
「げっ何それ~。もしかして、滝の中死体あるとか?ホラーじゃん。まじ?」
仙人は、小首を傾げながら、ちょっとだけ考えて言った。
「いや、河童に見てきてもらったことあるが死体はなかったなぁ~。」
河童がかぶせるように言う。
「そんなもんないわ!あそこへ入ったやつらは、みんな消えた。俺も、飛び込むやつ追いかけてみたことあるが、追いかけてる途中で光って消えたわ。」
「へーーー。そしたら。飛び込んだら帰れんのかな?」
「さあて。元の場所に戻るかどうかまで知らんからの。やってみるか?とりあえず、飛び込んだらここには戻れん様じゃがな。誰もいないところを見ると。フォフォフォ。」
仙人の変な笑いに顔が引きつったが、そんな不確かな滝つぼに飛び込む気にはなれなかった。
「また、違う場所に飛ばされる可能性も有るってことだよね?仙人様?」
「うむ。そうじゃの」
「じゃ、やーめた。河童といる。」
「げっ何言ってんだ。お前。馬鹿なのか?なんで、俺がお前と一緒にいるになるんだ?」
河童がムキーと怒りながら言うが、気にならなかった。
「い~じゃん。もう、ダチっしょ!」
そう言ってウインクしてやったが河童には通じなかった。
「なんだ?目にゴミが入ったのか?・・・どうでもいいが、お前、水の中に住めないだろ。」
「あ~まじか~。いい考えだと思ったのに・・・。って待てよ。こっちは、異世界なんだから、水でも住めるんじゃない?異世界だけに・・・。」
「じゃ、やってみろよ。俺についてこい。」
河童がドボンっと水に飛び込む。それに続いてドボンっと飛び込む。
『えっ底が見えない・・・』
河童に言われて、つい、負けん気を出してついていったが、そこは、さっきの滝つぼだった。
その時だった、水の中で鱗が剥がれるかのように、コンタクトがパラりと取れて水底に沈んでいく・・・。
『溺れる・・・・・。』
そう思って無我夢中で河童にしがみついた。すると、さらに自分が重くなるのを感じる。もれなく、小鬼とたぬきちまで飛び込んでいた。もうだめか・・・と思っていたら自分の周りが発光するのが分かった。
『うっ忘れてた・・・ここ、滝つぼじゃん!!』思うが早いか遅いのか?いったい、どこに飛ばされるのか?元の世界に戻れるのか?・・・どうする?私!!!
意識がどんどん薄れていく・・・。『やっぱり、自分は死んでいるんだろうか?』そんな風に思っていたら、ドサッと何かの上に転がり落ちた。
「いたたたた・・・。」
気付けば、自分のベッドの上だ。
「は~。夢か・・・まじ、リアルなんだけど。ん?んんんん?重っ。」
身体を起こして目が合ったのは、あの河童だった!!
「うわ~~~~!!!!。」私、ベッドから飛び出して壁に張り付く。
「うわ~~~~!!!!。」河童、布団にしがみつく。
「うわ~~~~!!!!。」小鬼、たぬきちに飛びつく。
「河童!!小鬼まで・・・。おまけに、たぬきち!此処元の世界じゃないのーーー!!」
その時だった、コンコンとドアがノックされガチャリと開けられた。
「ちょっと!!友香。起きてるんなら早く用意しなさい。」
「あ!」
「あ!」
「あ!」
『キャーーー!』という母の悲鳴と共に・・・私の奇妙な共同生活がスタートしたのだった。
コンタクト 妖たちに出会いました。もれなく、たぬきも 華楓月涼 @Tamaya78
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