美人姉妹を助けて始まった重たく愛される日々

「ただいま~! 姉さんお風呂行ってきて良いよ~」

「分かったわ。それじゃあ行ってくるわね」

「あいよ」


 部屋に戻ってきた藍那と入れ替わるように、亜利沙は部屋を出て行った。

 風呂上がりの藍那は既に髪も乾かし終えており、俺と二人っきりになった瞬間ぴょんと跳ねるように飛びついてきたので、俺はそれをしっかりと受け止める。


「奏ちゃんのこと……少し残念だったかも」

「あはは……」


 藍那の口から残念だったという言葉が出た瞬間、俺は苦笑する。

 亜利沙と藍那は奏との関係進展を望んでいた……まあそれはどちらかと言えば可愛い妹分が増えるというのもあるし、彼女なら仲良くなれると確信していたからこその言葉だったはずだ。

 俺はそのことを理解しつつも、改めて気持ちを伝えることに。


「確かに奏のことは大切だ……でも俺は恋人として、女性としてそういう関係を持つのは藍那たち以外に考えられないんだ」

「隼人君……」

「まあ、三人の女性と深い関係の時点で説得力はないんだが……それでも俺にとってどこまでも大切なのは藍那たちなんだよ」


 抱き着く藍那の顔を覗き込み、そっと顔を近付けてキスをする。

 触れるだけのキスではなく、しっかりと舌を絡め合う深いキス……こんなことをすれば今がどんな時間帯であっても我慢出来なくなるはずなのに、それでも俺はこの行為を止めることが出来ない。

 しばらくキスを続けた俺たちだったが、藍那がそっと離れて口を開く。


「そうだね……あたしたちは少し前のめりすぎたのかも。お母さんも言ってたけど隼人君には確かな信念がある……えへへ♪ 隼人君だ~いすき♪」


 再び胸元に飛び込んできた藍那の頭を撫でながら奏のことを考えた。

 俺は別に今の関係性に落ち着いたことを残念には思っていないし、むしろ安心しているほどだからな。

 それから藍那とイチャイチャしたまま過ごし、亜利沙が戻ってきたら彼女も加わって……そうして時間が過ぎて夜中になり俺は星空を眺めていた。


「……ふぅ」


 今日もまたお勤めご苦労様と星々に言われているような気分になったが、その理由は部屋に敷かれた敷布団の上に答えはある。


「すぅ……すぅ」

「……ぅん……すぅ」

「……隼人……くん」


 三人の美女――亜利沙と藍那、そして咲奈さんが薄着で眠っている。

 何故薄着なのかと言われたら……まあ暑いからじゃない? なんて言ってみるけど別に誤魔化す必要もない。

 先程まで彼女たちの相手をしたからだ。


「……マジで体力付いてきたなぁ」


 割とマジでこれは思う。

 心なしか学校での体育の時も息切れするようなことも少ないし、それこそ体力作りのマラソンをしても良いタイムを叩き出せるほどなのだから。

 まあ特に関係はないかもしれないけど、体力が付いてきたのは本当だ。


「正直爛れている生活と言われたらそれまでだけど、幸せなことには何も変わらないからな」


 それだけは何も変わらない……そしてこれからもずっと続いていくはずだ。

 とはいえこれで順風満帆だと完全に満足してしまうのではなく、この生活を続けていけるように……守っていけるように俺ももっと成長していくのが大切なことだ。

 これからの将来もそれを見据えながら、どこまでも彼女たちの頼られる立派な男になりたい……それが俺の目標になるのかな。


「隼人君?」

「どうしたの?」

「あ、すまん起こしたか」


 物音を立てたつもりはなかったけど亜利沙と藍那を起こしてしまったらしい。

 咲奈さんは眠ったままみたいだが、ちゃっかりしているのでもしかしたら寝ているフリをして微笑ましくしている可能性も無きにしも非ず。


「ちょっと空を眺めててな」


 眠れないわけじゃないのでそのまま寝てて大丈夫、そう伝えたけど二人は立ち上がり俺の傍に寄り添った。

 二人ともパジャマがはだけているだけでなく、下半身は下着一枚なのでとにかくエッチな姿を披露しているが、俺の傍ということで安心しきったように表情は柔らかい。


「綺麗ね」

「そうだねぇ」


 それから三人で空をしばらく眺めた後、俺はそっと口ずさんだ。


「俺……もっと立派な人間になるよ。何があったとしてもみんなを守れるように、もっともっと頼れるように」


 そう口にした瞬間、両方の頬をチュッと音を立ててキスされた。

 亜利沙と藍那はジッと俺を見つめ、それぞれ順番にこう言った。


「それは私も同じだわ。私ももっと隼人君に頼ってもらえるように、それこそ藍那や母さんに頼ってもらえる立派な人間になりたいもの」

「あたしもだよぉ! 隼人君や姉さん、お母さんに頼ってもらうのはもちろんだけど自分で自分を誇れる人間になりたいもんねぇ!」


 つまりみんな、考えることは同じってことなのか。

 誰か一人が成長するのではなく、みんなで同じ道を歩みながら将来に向かって成長していく……なるほど、それこそ俺たちに相応しい道のりかもしれない。


「二人との出会いから色々あったけど……改めて思うよ。俺、二人に会えて本当に良かった」

「私もよ」

「あたしもだよ!」

「私もですよ」

「っ!?」


 スッとお腹に腕が回り、背中から誰かが抱き着く……隣に亜利沙と藍那が居るのであれば、後ろに居るのは咲奈さんしか居ない。

 やっぱり起きてたんだなと苦笑したが、俺はこうして三人に囲まれている今が本当に幸せだ。


(母さんに父さん、見てるか? 今俺、めっちゃ幸せだよ)


 天国から見守ってくれているであろう二人にそう心の中で言葉にした後、俺は大きく腕を広げるようにして三人を抱きしめようとするも、もちろん三人を抱きしめるなんてそんなことできるわけがない……それでも俺は頑張った。


「やっぱり無理かぁ……まあでも、三人ともこれからずっと一緒だからな! 何があっても離れない! 亜利沙、藍那、咲奈さん! 大好きだあああああああ!!」

「私も好きよ隼人君!」

「あたしも好き!」

「私もですよ!」


 こうして幸せの中に居たとしても、大変なのはむしろこれからだ。

 けれど何があったとしても俺たちは必ず乗り越えることが出来る……そしてどこまでも四人でずっと笑い合うことが出来るってそう信じている。

 だから三人とも、改めて末永くよろしくな!!


 美人姉妹の二人とそのお母さんを助けて始まった俺の物語……重たい愛に包まれながらだけど、間違いなく俺は幸せだった。





【あとがき】


ということで、こちらは一旦区切りということで完結という形になります!

長らく応援していただきありがとうございました!


続きというわけではないのですが、美人姉妹――“おとまい”に関しては書籍等の作業を頑張って行きたいので、そちらもどうか目にしていただければと思います。

コミカライズも始まっていますので!


それではみなさん本当にありがとうございました!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【書籍化】美人姉妹を助けたら盛大に病んだ件 みょん @tsukasa1992

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ