第4話井戸

戦争で焼けなかった家にはけっこう井戸がありました。もちろんうちの家も古い家だったので、台所の勝手口から出るとすぐ左に井戸があり、大きな水道のような水を吸い上げてきてくれる物がついてました。もちろん自動ではなく押しては戻り押しては戻りを繰り返して水を汲み上げていました。

夏になると井戸にロープをつけたバケツにスイカ🍉を入れてそれを降ろして冷やしていました。そう、まだ一般家庭には冷蔵庫が普及していなかったんです。

ですから、夏になると家に氷やさんが氷の固まり、今で言えばかき氷やさんのあの固まりのもっと大きいやつです。それを持ってきてくれて、今のクーラーボックスのような、でももっと保冷力のある箱に入れてくれました。

使う時にはバーテンダーが氷を割るように、アイスピックで氷を崩して使ってました。ですから、氷は本当に透き通って綺麗だし溶けにくいので、お母さんが作ってくれたミルクセーキを飲み終えたあとでもコップの中で氷を完全に無くなるまでコロコロして飲んでいました。

ある夏の日、いつものようにスイカ🍉を井戸に降ろして、冷えたスイカ🍉を食べようと引き上げたところ、バケツがバランスを崩して、大事なスイカ🍉が井戸の水の中に落ちてしまいました。バケツでもう一度すくい上げようとしたのですが上手く入ってくれず、食べるのを諦めざるをえなくなってしまいました。

そのスイカ🍉があまりにも悔しくて、私の脳裏に焼き付いたって訳なんです。

食べ物の悔しさは深いものなんですね。いやはや

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じゃり道 @seifu928

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