第4話 したいことが見つかった
「大変だ!!戦争だ!!サル達が攻めてきた!!」
がばっと黒いイヌが起きました。
そして激しくネコを揺り動かしたのです。
「起きて下さい。戦うのです。一緒にサルと戦って下さい」
「はあ」
ネコはいきなりのことで、まだ体がぐにゃぐにゃしていました。
辺りを見回すと怖い顔をした大勢のイヌ達が戦争の準備を始めていました。
「サルが攻めてくるって?何のことですか?戦争って?」
ネコは本当に意味が分からず、ただオロオロするばかりでした。
「やっぱりよそ者はだめだ」
「ヒゲだけ立派な野郎だ」
「なんだか、なよなよしていたからな」
ネコに舌打ちをして、イヌ達はあっという間に全員、丘の彼方に駆けて行ってしまいました。
「サルと戦う?・・・戦争?・・・なんのことだろう?」
少しの間でしたがイヌ達に親切にしてもらった恩もあります。
自分のあまりの興味のなさにネコは少し反省しようとも思いました。
でも、すぐに鳥の言っていたことを思い出しました。
「自分のしたいことをする。そうだった。でも、したいことって何だろう。
したくないことはあるけれど・・・」
とり残されたネコは、一度深呼吸して静かに自分の顔を手でなでてみました。
くりくりと目や口やヒゲの周りを手でふくとやっぱり不思議に、気持ちが落ち着くのでした。
やがて、遠い遠い記憶が彼を呼び始めました。
「そうだ、僕は、ネコだ。僕は、ネコだ。したいことは何だろう。したくないことはあるけれど・・・」
ネコはしっぽを軽くふっておおきなあくびをしてみました。
そして、コロンと横になり、首をゆっくり持ち上げて自分の胸のあたりの柔らかい毛をホロホロとなめ始めました。
南風にのって遠くからイヌとサルの激しく争う声がぼんやりと、夢のように聞こえてきました。
ネコは自分の胸のあたりの毛をもう一度ヒョイヒョイなめながらつぶやきました。
「あれが戦争だね」
お日様がネコをあたたかくやさしく包み始めました。
また、ネコはゆっくりと大きなあくびをしました。
ネコは思い出しました。
こうしているのがしたいことなんだ。
~完~
世界で初めてのネコ! 坂田修一 @osamu023
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