第4話(饂飩か蕎麦か)

 信長は即席麺を見るのが生涯で初めてだ。手に取り、その軽さに眉をひそめる。


「このようにフワフワとしたモノで、腹は満たされるわけなかろう!」

「お湯を注ぐと目方めかたが増えまする」

「赤いきつね?」

「それはしなの呼び名です。緑のたぬきと云うのもありまする。そうですねえ、この時代の今日は大晦日おおみそかで、年越しに蕎麦そばを食べる風習がありましてね。こちらを料理いたしましょうか?」

いな、ワシはオヌシが最初に申した通り饂飩うどんがよい」

「そうですか、承知いたしました」

「おい、もう1つあるが、そいつは?」

「こちらは白い力もちうどんにございまする」

「それも赤いきつねと同じく饂飩なのだな?」

「はい、今に限って紅白きねつき餅が入っておりまする」

「おおそれだ! ワシはそいつに決めた!」

流石さすがは織田信長さん、実にお目が高いですねえ。えへへ」


 源内は信長が指名した白い力もちうどんの透明な包装をがし、容器の紙蓋かみぶたを半分だけ開き、中から七味唐辛子つき粉末出汁だしの小袋と紅白餅の個別包装を取りだした。

 出汁の小袋と個別包装を順番に破って、粉末と餅を乾燥麺の上に載せる。

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