第6話(信長の運命)

 食卓に沈黙が続き、即席麺の容器にお湯を注いでから4分ほどが経った。

 信長が、つむっている目を開く。


平賀ひらがとやら」

「はい、なんでございましょうか?」

「ワシがいた時代の本能寺に、ワシを戻してくれ」

「そうしたら炎に包まれて、死んでおしまいになられまする」

「ゼヒもなし、ワシの運命さだめよ。変えてはならぬ」

「承知いたしました」


 先に信長が航時空機こうじくうきゲンナイ弐式にしきに乗った。

 源内も、お湯を注いである白い力もちうどんの容器と割り箸と七味唐辛子の小袋をまとめて片手に持ち、機体に乗り込む。


「では参りましょう」

「おお」


 望み通り信長は元の時代に戻った。


「お食べくだされ。これくらいで歴史は変わりません。たぶん」

「ふたたびせいを受けたなら、赤いきつねと緑のたぬきも食してみたいものよ」

「そうですねえ、さあどうぞ。たいへんお熱くなっておりますゆえ、火傷やけどなさらぬよう、くれぐれもお気をつけて」

「おお」


 信長は機体から降りて、源内が差しだす容器と箸と七味を受け取る。

 ゲンナイ弐式が源内を乗せたまま瞬時に消える。

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