開戦! 緑と赤の仁義なき戦い
葵 悠静
本編
「狐のあんさん商売繁盛してまっか」
「なんや、誰かと思ったら狸かいな。見ての通り立ちぼうけやわ。喧嘩でも売りに来たんか」
「いやいやどういう調子かなと思って、見に来ただけですがな。そんな喧嘩腰にならんでも。仲良くやりましょうや」
「はっ。見に来ただけって自分の意思やないやろ。ただそこの棚卸してる店員さんに連れてこられただけやろ」
「そらそうですがな。こんな人がおるところで私がとことこあるいてあんさんのところ来てたら、みんなびっくりするでっしゃろ。それに立ちぼうけ言うても、あんさん後ろの方に控えてただけやろ?」
「そらそうや。隣の狸に比べればみんな狐の方を持って行ってくれてるわ」
「あら、それは聞き捨てならんな。あんさん今年の合戦の結果知ってまっか?」
「あんなん二年連続狐が勝ってるんやから、今年も常勝やろ? 分かりきってる結果をいちいち見たりせえへんわ」
「それがですね、今年は狸が勝ってるんですわ。つまりどっちもどっちってことですわ」
「……ほお? 一回勝ったくらいで調子に乗ってるんじゃないぞ? ええわ、そんな喧嘩売ってくるんやったらその勝負乗ったるわ」
「だから別に喧嘩は売ってないんやけど……」
「うっさいわ。大事なんは過去じゃなくて今やろ。ちょうど自分ら先頭や。次お客さんに持って行かれた方が勝ちや。シンプルでええやろ。どうや?」
「あんま気のりまへんけど」
「なんや、逃げるんか。おもんないのー」
「……そこまで言うなら乗りましょか。どんな結果になっても恨みっこなしでっせ」「もちろんや」
「お前ら、ちょっとええか」
「ん? 誰かと思ったらマルちゃん正麺のあんさんじゃないですか。どうしたんですか?」
「俺らの勝負にケチつけんといてや」
「別にケチつけるつもりはあらへん。お前らが火花散らしてるところ悪いけどな、何も勝ち負けだけじゃないと思うで。どんだけお客さんに……あ、お先に」
「なんや、あんさん持ってかれてもうたわ」
「ほんまや。いうなら最後まで言ってもらわんと気になるがな。まあインスタント界の不動の地位を築いてるあんさんに言われても、効果ないと思うけど」
「そう不貞腐れなさんなや。ほら、あの親子こっち来そうでっせ」
「今日のお昼はうどんかそばでもいい?」
「うん、僕もそれがいい」
「じゃあどっちにしよっか。赤いきつねさんか緑のたぬきさん。好きな方を選んでいいわよ」
「うーん……じゃあ赤!」
「あら、じゃあお母さんは緑色の狸さんにしようかな」
「えー狸さんずるーい。僕も狸さん食べたい!」
「あらあら。じゃあ帰ったら分け合いっこしましょうか」
「うん!」
「狐のあんさん」
「なんや狸」
「これはどうなるんでっか?」
「勝敗か? まあ……引き分けやろ」
「……せやな」
「なんかそんなことよりも……」
「ええ、多分同じこと思ってまっせ」
「「私ら愛されてるなあ」」
開戦! 緑と赤の仁義なき戦い 葵 悠静 @goryu36
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